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三井物産vs三菱商事 チリ銅鉱山権益争奪戦リスクとリターン(2)

 果たせるかな、チリの銅鉱山を巡っては、早くも騒動が表面化した形になっている。
 前述のように三菱商事は約4200億円を投じてチリの銅鉱山運営会社に出資した。売主は英国の資源メジャー、アングロ・アメリカン。ところが、来年1月までにこのアングロ・アメリカンから先の銅鉱山運営会社の株式49%を取得する権利を所有しているチリ銅公社コデルコが「約束が違うではないか」と猛反発しているのだ。そしてコデルコに対し、5180億円の融資で一足早く商談をまとめたのが三井物産である。つまりこの銅公社を介して、三菱商事とのガチンコ対決を迫られた格好になっているわけだ。
 この勝負、公社(=チリ国営)が主役だけに、どう決着するかは全く予断を許さない。まして自身の運命を託すほどの大枚を投入した資源エネルギー権益は、小説『不毛地帯』さながら一皮向けば「狐とタヌキの化かし合い」を地で行くドロドロの世界である。世界経済の悪化に伴い、今後チリに類した騒動が各国で頻発するようだと、商社の投資リスクが根底から問われかねない。

 総合商社ウオッチャーは、三井物産が自らの意思に反しているとはいえ、チリの銅騒動に巻き込まれたことに「あの教訓が全く生かされていないのは残念」と打ち明ける。物産は昭和45年から国策としてイランの石油化学事業に参加。同社を中心に『イラン・ジャパン石油化学(IJPC)』の旗振り役を務めたが、イラン革命とこれに続くイラン・イラク戦争から、この大事業は昭和56年暮れに破綻。プロジェクトの中核を担っていたため、5000億円に上る損失を被った。
 「当時の三井物産は、政界の田中派と資源派財界人の口車に乗って壮大なロマンに打って出たもののイラクで墓穴を掘り、後ろ向きの戦後処理から倒産寸前に追い込まれた。口さがない向きは『万事に慎重な三菱商事と違って世界の資源メジャーに対抗した報い』と斬って捨てたものです」(商社ウオッチャー)

 死線をさまよった三井物産に対し、当時は「もう2度と資源ビジネスに色気を出すことはないだろう」との観測しきりだった。それを忘れたかのように資源投資に前のめりになり、バブルを謳歌しているのだから、時代が変われば変わったものである。
 一方で、その当時は“慎重”と評価され、だからこそ堅実路線を取っていた三菱商事が資源投資を行い、海を隔てたチリで一躍脚光を浴びているのも、歴史の皮肉でしかないだろう。

 そんな中、住友商事だけは、まだ払拭しきれないトラウマが残っているようだ。
 「その理由は明白です。住商は平成8年に、当時の非鉄金属部長が銅の詐欺取引で2850億円の大穴を開け、尻拭いに汲々とした過去がある。この部長は後に8年の実刑を受けました。そんな理由で、今なおバブル投資とは一線を画しているのです」(経済記者)

 世界同時不況の足音が間近に聞こえる今、ハイリターンのすぐ後ろに迫る“悪夢”が再現されることのないよう願いたいものだ。

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