「本当はいつもは眼鏡です。でも、お店では眼鏡をしないように言われているんです」
と言っていたことがあった。つまり、キャバクラ嬢が眼鏡を嫌がっているのではなく、店側の方針として、眼鏡をかけさせない、となっているようだ。
でも、どうして眼鏡をかけさせないのか。眼鏡をかけていてどうして不都合なのか。何年か前に、眼鏡っ子のいるキャバクラ探しをしたことがあります。
ちなみに、「〜探し」を私はよくします。「コスプレをしている店探し」、「嫁候補がいる店探し」、「在日韓国人がいる店」などをよくしていたと思い出しました。
さて、話を戻すと、「眼鏡っ子のいる店探し」をした時に、客引きに聞くと、ほとんど同じような答えが返ってきます。
「うちはいませんね。というか、キャバクラにはいませんよ。なぜって、眼鏡をしていると、指名されないし、雰囲気が違ってくる。お客さんは素顔の奇麗な女性が好きなんじゃないですか?」
そうした理屈はわからなくはないが、では、実際に、眼鏡っ子のキャバクラ嬢がいて、その子が眼鏡を外した方が指名客が多くなった、というケースがあったのか? というと、ほとんどない。ほとんど、というよりも、そんな話を聞いたことはない。
つまり、キャバクラ嬢は眼鏡をしない、という一般的なイメージが支配しているだけなのだ。客本意ではなく、キャバク嬢本意でもなく、店の経営方針であるが、確定的な根拠はそれほどないってことなのだろうか。
これは、数年前に歌舞伎町で「コスプレ店」がほとんどなかった時の理由と同じだ。あのときは、だいだいこんな理由だった。
「歌舞伎町の客は、コスプレなんて求めないです。コスプレすると、高級感がなくなるし、女の子に会いにくる、というよりは、コスプレをしている子を求めているんでしょ? だったら、うちの店の子じゃなくてもいい、ってなりませんか?」
理屈になっているようで、理屈になっていない。なぜなら、こういう理屈をいう店員や客引きは、コスプレ店に勤めたことはない人が多いからだ。
「コスプレ店探し」をしていた当時、歌舞伎町にあったのは、セーラー服コスプレ、スチュワーデスコスプレ、ナースコスプレくらいだったか。
今では、メイドコスプレのキャバクラはある。また、セーラー服コスプレは、普通のキャバクラと、セクシーキャバクラとがある。スチュワーデスコスプレはセクシーキャバクラ、ナースコスプレは「いちゃキャバ」(セクシーキャバクラとは違い、脱がずに、激しいタッチもなく、ソフトなタッチのみ)といった感じになっている。
以前に比べれば、客の趣味もはっきりしてきた、というかわかりやすくなってきたためか、コスプレ店の種類も多様化してきたのだろう。「歌舞伎町の客はコスプレなんか求めていない」と言われていた数年前が嘘のようだ。
だったら、眼鏡という“コスプレ”があってもいいんじゃないか。そう思ってくれる店がそろそろ現れてもいいんじゃないかと思うのは私だけだろうか。いや、求めている客がほかにもいるのだ。
女の子にどんな眼鏡が似合うのをアドバイスをしつづける、自称「眼鏡コンサル」の男性(20代中盤)は言う。
「眼鏡っ子のいるキャバクラはなんでないんですか? 絶対にはやると思うよ。出来たら、僕は絶対に通う」
私も、この「眼鏡コンサル」男性と一緒に通いたいと思う。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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