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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? 日本代表効果の限界(上)

 11月18日のオーナー会議で財政危機の日本野球機構(NPB)救済策として、日の丸を背負った日本代表の常設プランが議題にあがった。事業検討委員会の下部組織としての新規事業立ち上げプロジェクトチームからのこういう報告があったのだ。

 「報告によるとペナントレースに影響しない開幕前の2月、3月、7月のオールスター休み期間中、日本シリーズの終わった11月の4回に分け、年間、合計20試合の日本代表試合をやれば、10億円から20億円の収益があるらしい」と、ある球団のオーナーは日本代表常設案の内容を明かしながらも実現への数々の高いハードルを指摘している。「常設するのはいいが、それでは実際に日本代表の監督を誰にするのか、選手はどうするのか。年齢面もフル代表にするのか、サッカーのようにアンダー20とかにするのか。難題が山積しているよ」と。
 他のオーナーが「まあ、夢のような計画ですな」と漏らしたように、机上論としては素晴らしいドリーム・プランだが、具体的な実現性になると、夢の計画止まりになってしまうのだ。
 確かに結果オーライだったが、第2回WBC日本監督代表人事のドタバタ劇を思い起こせば、常設日本代表の難しさがわかる。北京五輪日本代表監督・星野仙一氏がWBCまで続投する予定だったが、まさかのメダルなしの結果に世論が猛反発。加藤良三コミッショナーは、王貞治コミッショナー特別顧問を中心にしたWBC体制検討会議まで新設。王氏の他に前北京五輪日本代表監督としての星野氏、最年長監督の楽天・野村克也監督、現場の監督と同時にフロントとしてGMも経験しているヤクルト・高田繁監督、選手として五輪を経験している若手OBの代表、野村謙二郎氏(現広島監督)。バラエティーに富んだメンバーで検討した結果、星野監督続投というシナリオが描かれていた。

 が、自らが日本代表監督就任に色気があった楽天・野村監督が「星野で決まっているようや。出来レースや」と暴露発言。呼応するかのように、「WBCは五輪の雪辱の場ではない。最強チームを作ると言いながら、現役監督を排除するのはいかがなものか」とマリナーズ・イチローが爆弾発言。星野監督続投が吹き飛び、消去法で日本代表・原辰徳監督が誕生。結果的にWBC連覇を達成したので、ハッピーエンドになったが、第1回WBC日本代表・王監督から3年後の監督人事一つでさえ、この有様だったのだ。常設となれば、どんなドタバタ劇になるか、想像がつかないだろう。
 かといって、常設日本代表案には、あっさり諦めきれない魅力がある。オーナー会議の2日後の11月22日に「セ、パ誕生60周年記念イベント」として東京ドームで行われた史上初の『U26NPB選抜対大学日本代表』が大成功したのだ。「3万人入れば御の字だろう」というNPB関係者の予想を大きく裏切り、前売り券が完売で当日券なし、なんと4万人を超える大観衆が集まった。「これならば、何年かに一度はやる価値がある」とプロ、アマ関係者共に色気を見せた。
 が、単純に喜ぶわけにはいかない理由がある。最大の集客源は、来年のドラフトの超目玉になる早大・斎藤佑樹だったからだ。斎藤に対する携帯カメラのフラッシュ攻勢のすさまじさは、WBC日本代表・イチローに負けないくらいだった。
 「今年はプロ対大学の試合が初めてという話題性、さらには斎藤という超人気スターがいたから、4万人を超えるファンが押しかけてきたが、毎年、斎藤がいるわけではない」。テレビ局関係者の言葉は核心を突いている。スポーツ紙が1面に飛びついた、「高校の同期対決の早大・斎藤vs巨人・坂本」という看板対決も今年だからこその売り物だった。
 大成功の裏には、表面化しなかった問題点もあった。北京五輪日本代表を務めた星野氏がテレビ放送のゲスト解説で厳しく指摘した。「マー君(楽天・田中)が出てこないのは大いに不満だ。頭に来る。今年はWBCから始まり、ペントレースでも大活躍したから、確かに疲れはあるだろう。が、投げなくてもいいから出てこなければいけない」と。
 ファンが一番注目していた、甲子園を沸かせたハンカチ王子、早実・斎藤佑樹vs駒大苫小牧・田中将大のドリームマッチ再現に、田中はハナから背を向けていた。プロ入り3年で順調にエース格に成長した田中にすれば、今さら斎藤との甲子園対決を蒸し返されることに不快感を隠せなかったのだ。が、「日本代表ならば誰もが喜んで参加しなければいけない」と星野氏は改めて訴えたのだ。もちろん第2回WBC大会での中日勢の全員辞退という異常事態が念頭にあってのものだろう。前述したように、「常設はいいが、監督をどうするんだ。選手はどうするんだ」という、あるオーナーがズバリ切り込んだ日本代表常設の最大の難題は、大成功裏に終わったU26NPB選抜対大学日本代表戦でも無縁ではなかった。
(つづく)

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