そんな“こち亀”に縁があるジャニーズタレントといえば、SMAP・香取慎吾だ。09年8月期の連ドラで、主人公の両津勘吉を好演。「両さん」の名義で主題歌もリリースし、東京・両国国技館でイベントを開催したほどだ。続く11年には、劇場版『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 〜勝どき橋を封鎖せよ!〜』が公開。両さんのチャームポイントである太まゆが、定着した。
SMAP最年少で、唯一30代である香取(39歳)。かつては天真爛漫キャラで、豪快、大食いが似合ったが、解散報道で心の闇が暴かれる記事が出回り、ソロ転身後を危ぶむ声が聞かれた。しかし実は、SMAPイチの芸術気質。息の長い表現者として表舞台に立つことができるのではないかと思われる。その理由は、絵画。趣味で始めたものだが、ここ数年で人の目に触れることとなり、評価を得ている。
大きなきっかけは、メンバ一唯一のレギュラー番組『SMAP×SMAP』(フジ系)。97年9月に放映された特別企画“香取慎吾ガンバります!〜夢のキャンバス鉄道〜”で、津軽鉄道の列車に地元の子どもたちと絵を描くというものだった。このとき、独特の作風を発揮。同列車は00年に廃車となり、現在は倉庫で眠っているが、オンエア後はファンが殺到した。
翌98年には、初のアートブック集『しんごのいたずら』を出版。05年には、草なぎ剛とメインパーソナリティーを務めた『24時間テレビ28』(日本テレビ系)で、チャリTシャツをプロデュース。クリエイティブディレクター・佐藤可士和と手を組んだ。その草なぎの主演ドラマ『独身貴族』(フジ系/13年)では、作中で絵画が飾られるという初の経験もした。親友である草なぎの主演ドラマだったという理由以上に、アート性が買われての“出演”だった。
11年には、シルク・ドゥ・ソレイユのスーパーサーカス『ダイハツ クーザ』の特命大使に就任。クーザの日本語訳「宝箱」をタイトルにしたアクリル画を手がけ、世界中から絶賛された。
そして昨秋には、パラリンピック競技団体共同オフィスのエントランスに、描きおろしの巨大壁画を寄贈。“I enjoy!”をテーマにした渾身の力作は、忙しい合間を縫って10日間、60時間をかけて完成させた。これは、20年に開催される東京五輪に関わるための布石だったが、皮肉なことに、開催時期にSMAPはいない。就任していた「日本財団パラリンピックサポートセンター」の応援役も辞任となった。
“香取画伯”の今後はいかに。SMAP解散のピンチをチャンスに、その英知な才能がさらに市場拡大されることを願う。