焦らず、機が熟すのを待っていた。昨年、ヴィクトリアマイルを制したエイジアンウインズもそうだったが、素質のある馬を大事に育てることで定評のある藤原英厩舎がまた一頭、遅咲きの大物を軌道に乗せてきた。
CBC賞の前哨戦となる前走のテレビ愛知オープン、トレノジュビリーの勝ちっぷりは本当に強かった。
「正直、ビックリしたよ。それぐらい強かったね。もともとは速い時計の出る馬場に不安があったし、あの時は中京の開幕週でしょう。半信半疑の部分があった。それが(芝1200メートル)1分6秒台の超高速決着に楽々対応して、勝ってしまうんだから」
普段からケイコをつけている田代助手も驚く圧勝劇だった。道中は6番手を追走。直線は余裕を持って抜け出し、2着のピサノパテックに1馬身1/4差をつけた。
レコードからわずか0秒2差の1分6秒9。時計勝負の申し子、父サクラバクシンオーの血が爆発した。この勝ち方は力がなければできない。決してフロックとはいえない走りだった。
さらに陣営を驚かせたのはレース後の状態だ。いつもならトモに疲れが出てしまい、ケアに手間取るというのだが、「今回はそういう面がまったくない。あれだけ速い時計で走った後なのにね。体質が強くなってレースを使い込めるようになったのも何より」と目を細めた。
前走と同じ距離、コースで行われるここは重賞初勝利の絶好機だ。「右回りに比べて左回りの方が断然スムーズだし、反動もなく元気いっぱい。ここはメンバーも手薄なだけに好勝負を期待している」
突出した存在がいない今のスプリント界。この一戦が終われば、秋のGIの勢力図が明瞭になっているかもしれない。