判決によると、栗田被告は好意を寄せていたキャバクラ勤めの女性から、無心をされたため、05年5月〜10年7月、インターネット上で会社の口座を操作して、178回にわたって、計約5億64万円を自分の口座に振り込み、そのほとんどのカネを女性に送金した。
供述によると、女性から「病気になり、入院、手術費がかかる」と現金を要求され送金を開始。会おうとしても「面会謝絶になった」とメールで断られ、疑問に思って問いただすと「自殺する」と返信されたため、送金を続けたという。
もちろん、女性に入院や病気をした事実はなく、カネはほぼ全額をホストクラブ通いなどの遊興費に使い、残っていないという。
山崎裁判官は「ウソを言って金銭を要求した女性の行為は非難されるべきだ」と指摘しつつ、「被告はカネがないことを説明して支払いを拒むべきだった。犯行の経緯や動機に酌量すべき点は乏しい」と話した。
キャバクラの客と従業員という立場にしかすぎないのに、「結婚したかったから」と、送金の動機を語った栗田被告。5億円もの大金を会社から着服し、女性の要求に応じて送金した罪は小さくない。女性にもウソをついて、多額のカネを引き出させた道義的な罪はあるが、残念ながら、法的に女性に弁済させることはできない。なんとも、やりきれない判決だ。
(蔵元英二)