人気チームだから、ほんの些細な弱点も目立ってしまうのだろうか。巨人の弱点は『投手陣』、『犠打』、クリーンアップの高齢化だ。
昨年オフ、投手陣の再整備に集中して大量補強を行った。投手陣の補強に偏重しすぎた感もあるが、間違ってはいない。セ・リーグは過去10年、チーム防御率1位チームが8度もリーグ優勝しているのだ。澤村拓一(22=中央大学)のストレートは脅威であり、新外国人投手や中堅ピッチャーも先発ローテーション枠を勝ち取ろうと必死に頑張っていた。こういう緊張のある練習が『強さの源』ともなっているのだろう。
強いて不安を挙げるとすれば、澤村が紅白戦、対外試合で内角球を投げていないことだ。東京ヤクルトの(佐藤)由規がルーキーイヤーで躓いたのは内角球のコントロールに欠いたからだとも言われている。持ち球を隠すため、意図的に投げていないのならいいのだが…。
投手陣が順調な仕上がりを見せているからだろうか。どうも、野手陣の湿りがちな打撃練習が気になってしまう。原辰徳監督(52)が紅白戦で『2番・坂本』をテストした(18日)。昨季のチーム全体での犠打犠飛数は107。リーグワーストだ。リーグ優勝を果たした中日が191(1位)、さほど細かい作戦を使ってこない阪神でさえ「149」を記録している。低反発の新統一ボールによる影響で本塁打は減少するとなれば、「走者を次の塁に確実に進める」バントは、さらに重要な作戦となってくるわけだ。バントの名手、川相昌弘・二軍監督(46)による特別指導も夜間練習で行われたと聞く。「選手への意識付け」だろうが、こういう分かりやすい練習メニューが組むのも『巨人の特徴』である。バントの成功率を高め、攻撃的な2番バッター(=坂本)で打順を編成する日もあるのだろう。
気になるのは、チャンスメイクする坂本たちではなく、クリーンアップのほうだ。
過去の実績からして、小笠原道大(37)、ラミレス(36)もシーズン終了時には好成績を残しているだろう。だが、ベテランはスロースターターであり、フリー打撃などで球足のさほど速くない打球を見ていると、その傾向が如実に表れていた(キャンプ中盤まで)。大田泰示(20)の覚醒が待たれるが、現・中核打者の小笠原、ラミレスの後を打つ「5、6、7番」が前半戦の明暗を分けるような気がしてならない。阿部慎之助(31)、亀井義行(28)、ライアル(27)、谷佳知(38)、矢野謙次(30)…。候補者は多いが、3年以上続けて高打率を残したのは阿部だけだ。長野久義(26)にも貪欲に5番奪取に挑戦してほしい。社会人時代の長野は“中畑的な雰囲気”も醸し出していた。「存在感のある、目立つ選手」だった。去年は新人なので、多少の遠慮もあったと思うが、もっと大暴れしないと、選手層の厚い巨人のなかでは生きていけない。長野に元気がないのは気掛かりである。
そんな野手陣のなかで、「おおっ!」と思わせてくれたのは、5年目の田中大二郎(22)と高橋由伸(35)だ。この2人は打撃好調である。とくに高橋は期待していいと思う。昨季は腰の怪我からの復帰で手探り状態だったが、今のところ、体調も良いと聞いている。また、鈴木尚広(32)も面白い。スイッチヒッターの1番バッタータイプだが、キャンプでは右打席での練習に時間を割いていた。鈴木の右打席は打球が伸びる。1番候補は松本鉄也(26)、売り出し中の若手・橋本到(20)、藤村大介(21)、坂本などライバルも多いが、今年は「5番以下」の打順で勝負してもいいのではないだろうか。そう思えるくらい、右打席のバッティングが良かった。今季は『右の代打』でこの鈴木が起用される場面も見られそうだ。
亀井、ライアル、大田による三塁の定位置争いだが、3人とも決め手に欠く。外野手を含めた他選手の状態を見ながら、併用していくことになるだろう。現時点では、小笠原を三塁に戻し、一塁で高橋を使ったのが良いと思うが…。(スポーツライター・飯山満)