絶対王者の座を簡単には譲らない。ヴァーミリアンがさらに調子を上げている。
「前走後もきっちり乗っているから。具合はかなりいいよ」と古川助手は笑みを浮かべた。主戦の武豊騎手が右腕を骨折するアクシデント。これは実に痛かったが、すぐさま頼もしい代打が決まった。11月27日に行われた1週前追い切りには、その岩田騎手が騎乗した。
栗東坂路。800メートル55秒7→41秒1→13秒7と時計はまったく目立たないが、これはいつものこと。実戦に備え、ケイコでは息をひそめるように動かない。
それでも岩田はひと味違う感触を得たようだ。「乗り味はさすがですね。やっぱり、モノが違う感じ。さすがGIホースといった雰囲気でレースが楽しみになってきた」とうなずいた。たくましく筋肉の詰まった馬体は、名手を一瞬でとりこにした。
古川助手も「もともと攻めは動かないから、ラスト1F13秒台なら上々。まったく心配ない」と言い切った。ドバイ遠征を経てJBCクラシック→JCダート→東京大賞典のローテーションは昨年と同じ。そして昨年はその3レースをすべて快勝したわけだが、今年は当時以上にデキがいいという。
「去年はドバイの疲れが尾を引いて苦労した。あの状態で国内GIを3連勝したんだから、順調にきている今年はもちろん…」。陣営は苦い経験を生かし、工夫を重ねた。その結果、馬は精神、肉体ともに成長した。残ったJCダートと東京大賞典も勝つのは、まるで既定路線のようだ。
強敵はいる。JBCで激闘を演じたサクセスブロッケン、米国帰りのカジノドライヴとイキのいい3歳馬だ。
しかし、古川助手は「前走、サクセスとの着差はわずかだったけど、内容はウチの方がかなり余裕があった。小回りの園田より阪神の方が競馬はしやすいし、最近は風格も出てきたから」
自分の競馬をすれば結果は出る。絶大な自信を胸に、仁川の砂を巻き上げる。