夫の芳雄は長身でたくましい体つきの上、なかなかの顔立ちをしたイケメン。スポーツ好きで日に焼けたボディは、見るからに逞しそうな外見である。
妻の絵理も、女優かモデルと見間違うほどの美人。しかも所帯じみたところがなく、普段から薄化粧と垢抜けた服装で、品のある主婦だった。
ところがこの夫婦、犯罪に手を染めてしまうことになる。
ことの始まりは、妻である絵理の不倫だった。
絵理は少し前まで、東京・港区の病院で非常勤のナースとして働いていたが、2002年頃からその病院を経営する47歳の医師と不倫関係になっていたのである。
医者とナースなどというと、絵に描いたような不倫の構図だが、その関係になるきっかけは明らかではないものの、絵理のほうからアプローチしたのではないかともささやかれている。
ともあれ、その分別ざかりとも言える年齢の医師は、20歳も年下の美人ナースと、幾度も肉体関係を持ったことは事実のようだ。
さて、2人が関係を持ってから半年近く経った2003年の年明け、夫の芳雄からその医師に連絡があった。妻との不倫の関係について、「オトシマエ」をつけろということである。
医師としても、不倫が発覚すればどうなるのかということは、ある程度予測していたのかもしれない。それに、見ず知らずの女性ならともかく、素性の知れたナースの結婚相手である。それほどひどいことにはならないと、密かに思ったのかもしれない。
しかし、その考えはかなり甘かったと、医師はすぐ後で痛感することになるのだ。
2月6日、医師は芳雄と会って「話をする」ことになった。当初は銀座で会うことになっていたが、言われるままに芳雄の勤める会社まで赴くことになった。
そして当日の午前10時過ぎ頃、医師は江東区にある芳雄の勤め先を訪れた。
しかし、そこは事務所のような場所ではなく、人気のない倉庫だった。そこには、芳雄と絵理の夫婦がすでに医師が来るのを待っていた。
「中に入れよ」
言われるまま、医師は倉庫の中に素直に入って行った。だが、そこではただの「話」だけでは済まなかった。(つづく)