旧K-1は4月5日、元K-1ファイター、マイク・ベルナルドさんの死去を伝えた2月16日以来、約1カ月半ぶりに公式ホームページを更新。「K-1の現状と今後について」のタイトルで、谷川氏が声明を出した。
谷川氏によると、旧K-1は多額の税金の支払い、フィイトマネーの高騰、テレビ業界が激変する社会状況のなかで、資金繰りが悪化し、未払い金が膨れ上がっていったという。
未払い問題を解決すべく、旧K-1は新オーナー探しに奔走。いったんは一大スポンサーだったパチンコ機器メーカーのフィールズ社が名乗りを挙げたが、交渉は頓挫。その後、マレーシアのスポーツエージェント「TSA」、中国の投資ファンド「PUJI」、韓国の投資家・金健一(キム・ゴンイル)氏らと話し合いの場を持ったが、まとまらなかったという。
そして、昨年8月に香港で設立されたK-1・グローバル・ホールディング・リミテッド(金健一社長)が、1月31日、金融業や不動産業を営む株式会社EMCOM(エンコム)ホールディングス(東京都千代田区/上野良治社長) の100%子会社である株式会社EMCOMエンタテイメント(東京都千代田区/金学敏社長)の子会社となることが決定。後にバルビゾン社が保有するK-1の国内商標権はK-1・グローバル社に移行した。
その結果、K-1・グローバル社運営による新生K-1・FIKAが始動。3・17後楽園では「K-1甲子園」を開催。世界大会は5月27日、スペイン・マドリードで開幕。その後、アジア、欧州、ロサンゼルスでの予選トーナメントを経て、11月にアジアで中量級「MAX」の、12月にニューヨークでヘビー級の「WORLD GP」の決勝大会を開催する予定。今後、プロは金社長、アマは創始者の石井和義氏が担当していくという。
ただ、FEGからK-1・グローバル社に事業譲渡されたわけではないため、負債やファイトマネーの未払いなどは未解決のまま。ファイトマネー等については、K-1・グローバル社が契約金の形で、少しずつ解決していくとのこと。
谷川氏は新生K-1に警鐘も鳴らしている。まず、金社長は格闘技に関して素人で、早急に専門的なプロデューサーを決めた方がいいと指摘。そして、ゴールデン・グローリー(バス・ブーン代表)との対立。ゴールデン・グローリーは旧K-1に、セーム・シュルトらの選手を派遣していたオランダの有力ジム。ブーン代表は前述の「TSA」をバックに、新生K-1の社長になる腹づもりだったが、交渉が破談になったため、新生K-1を敵対視。ブーン代表は「グローリー」という格闘技イベントを定期的に開催していく意向で、K-1戦士の引き抜きに躍起。すでに、K-1の象徴でもあるピーター・アーツ、ジェロム・レ・バンナ、ジョルジオ・ペトロシアン(09、10年MAX世界王者)と契約を交わしたという。新生K-1はブーン代表が敵対する欧州最大の格闘技団体「It's showtime」と全面協力する予定で、新生K-1と「グローリー」の仁義なき戦争で、共倒れになることを懸念している。
K-1プロデューサーの座を下りた谷川氏は、今後、新たな格闘技イベントを旗揚げするという。すでに構想は出来上がっており、資本協力する投資家も多数現れているとのことで、「格闘技界の新たな革命になる」と自信満々。新イベントも結構だが、設立の際にはFEGの多額の負債を具体的にどのように返済していくかを明示することが、社長としての責務だと思われる。
(落合一郎)