昭和末期の頃は、あくまでスタッフロールや出演者の名前表記など必要最低限の使用に留まっていたテロップ演出だったが、平成に入ってからは、出演者の放つおもしろい発言やスタッフのツッコミなど様々な可能性を導き出し、現在では多くのバラエティ番組が独自のテロップ演出を編み出している。
しかし、テロップ演出は作り手の意図を伝えやすくなる一方、誤植などのミスも誘発しやすくなるため、これまで多くの放送事故が報告されている。
近年のテロップ事故でもっとも物議を醸したのが、2016年に放送された日本テレビ系の単発バラエティ番組『超頭脳トレード』での事故であろう。
この番組は、各業界の天才たちの頭脳を別ジャンルで活用させたらどうなるのかを検証した番組で、本番組のコーナーにて、キューサイ株式会社の「青汁」のCM放映を特集した。
キューサイの青汁と言えば、「マズい〜。もう一杯」というお馴染みのフレーズで有名だが、なんとこのCMに出演している俳優・八名信夫の名前に、「故人」である事を示す「故・八名信夫」の表記があったのだ。
八名は現在84歳の現役俳優で、亡くなってなどいない。このテロップミスはすぐにインターネット上で拡散され、所属事務所も番組放送後に、「明らかな事実誤認」と公式サイト上で抗議するなど大きな騒ぎになった。
また、所属事務所は本件に「もし放送前に知らされていたら、ミスを指摘できていた」とコメントしていることから、八名サイドには特にCM映像の使用許可を得ないまま放送していたことがわかった。
日テレも放送の翌日、公式サイト上でミスがあったことを認め、「ご本人および関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫び致します」と謝罪文を掲載した。
この後、『超頭脳トレード』は再放送のほか新作も作られておらず、公式HPも削除されたが、現在では前述の謝罪文のみ閲覧可能となっている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)