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高円寺を歩く(1)

 高円寺は小説『1Q84』(村上春樹)の中で重要な舞台に設定された。『1Q84』は作中でともに30歳を迎える男女の物語だ。女性主人公・青豆は、自由が丘のアパートで暮らす殺し屋。いっぽうの男性主人公・天吾は、高円寺のボロアパートに住む文学青年。1984年という時代背景の中で考えれば、「ナウい」青豆と「ダサい」天吾の物語ともいえようか。2人は、高円寺で再会する。

 高円寺がある東京都杉並区は、都心を走る環状線である山手線エリアの西部に位置する。山手線エリアの中心には、江戸城(皇居)がある。江戸城(皇居)は、地理的に見ると、東京西部から続く武蔵野台地の東端。江戸城(皇居)のお膝元・駿河台から見渡せる下町は、東京大空襲では、浅草寺など寺社仏閣を含め焼け野原となった。

 高円寺周辺は、戦前から、長く「郊外」だった。物価が安いこともあり、若い文学者たちが集結した時代もある。いっぽうで、大正年間に高円寺に近い井荻村で区画整理を断行したのは、被選挙権の発生する30歳の“全国一若い村長”。斬新さや自由を許す土壌があるのかもしれない。

 現在の高円寺がどうなっているのか。歩いた。

【JR高円寺駅南口】
 JR高円寺駅南口に出ると、駅前ロータリーが整備されている。北口とともに、恒例の高円寺阿波おどりにあわせ、昨年夏に工事が完成した。かつての高円寺駅前の姿はわからないが、現在は整然としている。しかし、駅前を離れると、すぐに路地の入り口が見える。

 JRの路線と隣接したアーケードには、ハートとツリーで飾った「pal」の電球がある。pal商店街の入り口は夜にはライトアップされ、駅前イルミネーションとなる。路線沿いに直進する。

 しばらく進むと、コンクリートの壁に「高円寺ストリート」の看板が見えた。中に入ってみる。高架下がそのまま路地になっていた。日曜日のためか閑散としているが、昼間から店を開けている居酒屋も何軒かある。ホルモン、串揚げ、お好み焼きなどの看板が目につく。「鉄板焼き全品200円」という安さに驚く。

【武蔵野台地と緑の街】
 「高円寺ストリート」から出た。今後は、猫の絵が描かれた看板やディスプレイがいくつも見える。電柱には、「飼い猫・探しています」の貼り紙も。地元住民の方にうかがうと、この付近は猫が多く、猫好きな人も多く、猫にちなんだ愛称で親しまれている人物もいるそうだ。

 JRの高架沿いから直角に曲がると、道がなだらかな坂になっていた。杉並区は、武蔵野台地のなごりか、隆起している道が多い。通りから奥の住宅街に続く路地へ目を向けると、いたる場所に緑がある。

 杉並区では、「みどりの基本計画」にそって、身近な緑を守り、新しい緑を創る取り組みを行っている。「生けがき道づくり」のモデル路線に認定され、規定を満たす生けがきや植込みを設置すると、費用が助成される制度も。「すぎなみ景観・ある区マップ」の配付や、『杉並「まち」デザイン賞』「風景写真コンテスト」の開催など、自然と人間が共生する街づくりに力を注いでいる。
 
【階段を下りると、そこはギャラリー】
 坂道の途中で、斜めになっている軒下に、「Gallery・たまごの工房」の看板があった。手づくりの看板に手書きの文字が、人を引き寄せる。扉を開けると階段があり、地階はギャラリー。

 「たまごの工房」では、2011年2月1日から13日まで、「卵・TAMAGO・たまご」展を開催中。この展示は、「たまごの工房」15周年記念であり、“作家のたまごや学生などが利用可能なギャラリー”という店舗の初心の表れでもある。作家それぞれの、「たまご」をテーマとする作品が展示されていた。(つづく/竹内みちまろ)

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