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歌謡(うた)のマドンナ あさみ ちゆき 路上ライブで約300人を集める“井の頭公園の歌姫” 「この場所が歌手としての大事な故郷なんです」

 「皆さん、こんにちはー! え? 服が可愛い? 似合ってる? あははは、ありがとうございます! 今日は暑いので、くれぐれも体調には気を付けて楽しんでいってください!」

 −−都内・井の頭公園。月に一度の土曜の昼下がり、その一角に黒山の人だかりができる。驚くことに、ほぼすべてが60代以上。その中心に立ってギターを持ち、観客と楽しげに会話しながら歌っているのが、あさみ ちゆきだ。
 「高校を卒業後に歌手を目指して山口県から上京しました。バンド活動をしたり、オーディションを受けたりといろいろやったのですが、うまくいかなくて…。諦めかけていた時に、ふと新宿で楽しそうに歌っている路上ミュージシャンを見掛けて『ああ私、音楽を楽しめていなかった。楽しく歌わなければ意味がないんだ』と気付いて、原点に戻る気持ちで井の頭公園で路上ライブを始めたんです」

 −−もともと演歌や昭和歌謡が好きだったという彼女。最初はラジカセとマイクだけで、藤圭子、ちあきなおみ、西田佐知子などの歌謡曲を歌っていたという。
 「みんな遠巻きに見ながら通り過ぎていくだけ。でも毎週続けるうちに、おじさんたちが常連で聴いてくださるようになって、そこから少しずつお客さんの輪が広がっていったんです」

 −−やがて、噂を聞きつけたレコード会社のプロデューサーから声を掛けられた。
 「歌手になるために出された条件は、ギターで弾き語りができるようになること。それはもう必死で練習しましたね。20代半ばでしたし、これが最後のチャンスだと思って(笑)」

 −−'03年にデビュー。『井の頭線』『青春のたまり場』『鮨屋で…』など、昭和の流行歌やフォークソングを彷彿とさせる悲しげな曲調で、過ぎ去った恋愛や家族愛をテーマにした歌が団塊の世代を中心に共感を呼んだ。'07年には、数々の名曲を生んだ作詞家・阿久悠氏がその歌声に惚れ込み、彼女のために全曲書き下ろしたアルバムも発売。デビュー後も月に一度のペースで井の頭公園で路上ライブを続けており、いつしか“井の頭公園の歌姫”と呼ばれるようになったという。
 「いろいろなメディアで紹介していただき、その度に観客の数が増えていった形です。今は多い時だと約300人。北海道や九州からやってくる方もいらっしゃって、ありがたいですね」

 −−近隣住民や他の公園利用者に迷惑が掛からないよう、マイクやアンプなどは一切使わず、完全に生歌のみ。ひと言も聞き漏らすまいと、数百人がじっと耳を傾け、独特な静寂が生まれる。一方で、誕生日を迎える人に向けて歌ったり、唱歌『ふるさと』を皆で合唱したりと、アットホームな空間だ。
 「なるべく後ろの方のお客さんにも声が届くように、歌う時はいつも以上に頑張って声を張っちゃいますね。なので、ここで1時間ほど歌うとかなり体力を使うんです(笑)」

 −−終了後には握手会も行われ、彼女とひと言交わそうと、長い行列ができる。皆が彼女の歌と人柄に惹かれて集まっているのだ。
 「お1人お1人とお話できるので私も楽しいですし、ふれあいの時間として大事にしています。ファンの有志の方がボランティアで朝から会場設営や人員整理をやってくださっていて、そんな皆さんの支えがあって続けられていることに本当に感謝しています」

 −−昨年1月に結婚・妊娠を発表。
 「私は兄を亡くしているので、両親がいなくなったら1人ぼっちになってしまうし、結婚して家族を持ちたいという思いが強かったんです。デビューして10年目の頃、まだお付き合いしている人もいない段階から“そろそろ結婚したいし、子どもを産みたい”という話を事務所の社長に話していました。その上で、“この人しかいない!”と思える人に出会ったので、迷いはなかったですね」

 −−大きなお腹を抱えてコンサートを行い、5月から産休に入り、7月に男の子を出産。秋には早くも活動を再開した。“子育てと歌手の両立は大変では?”と尋ねると、表情を緩ませて親バカぶりを発揮してくれた。
 「確かに大変ですけど、楽しいですよ。息子が寝ている時でも、つい練習のために歌っちゃうんですけど、お腹の中にいる頃からずっと私の歌を聞いていたせいか、大きな声で歌っても起きないんです(笑)」

 −−ギターの音にのせてどこか憂いを帯びた声で様々なジャンルの曲を歌い、独自のスタイルを確立しつつある。今後どういう歌を歌っていきたいか、夢を聞いた。
 「私はポップスも演歌も歌謡曲も童謡も大好きで、音楽ジャンルに関係なく何でも歌いたいと思っています。生意気に聞こえるかもしれませんけど、“あさみの歌”を、一つのジャンルとして捉えてもらえるくらいに、自分の歌の世界を作り上げていきたいですね」

 −−井の頭公園でのライブは、間もなく通算200回を迎える。コンサートホールを満杯にできる人気を持ちながら、路上ライブを続ける理由を聞いてみた。
 「“あさみ ちゆき”という歌手を生み、育ててくれたのが井の頭公園と、そこに集まってくださる人たち。だから、私にとっての大事な故郷なんです。戻るべき場所であり原点。これからもずっと続けていきたいですね」

あさみ ちゆき=1978年1月11日、山口県光市出身。2003年、テイチクエンタテインメントより『紙ふうせん』でデビュー。日本レコード大賞の日本作曲家協会奨励賞、日本有線大賞の有線音楽賞等を受賞。芸名の「ちゆき」は、若くして亡くなった兄・智幸からとったもの。『かすみ草エレジー』は、テイチクエンタテインメントより発売中。

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