そもそも毎年、宮中では天皇がその年に穫れた作物を神々に供える「新嘗祭」が11月に行われている。かつては新嘗祭と大嘗祭に区別がなかったようだが、7世紀後半の第40代天武天皇、41代持統天皇の時代に、即位して初めて執り行われる新嘗祭を「大嘗祭」として区別するようになったとされている。その後、1466年室町時代の第103代後土御門天皇の代で一度、朝廷の困窮や戦乱の影響で221年間中断されるが、江戸時代の1687年、東山天皇の即位の際に再開。続く中御門天皇の即位の際には行われなかったが、その次の桜町天皇から現代まで変わらず続く歴史的な行事となっている。
大嘗祭は皇居・東御苑のおよそ90メートル四方の敷地に特別に設営された「大嘗宮」にて行われ、愛知県で作られた「繒服(にぎたえ)」という絹の反物と、徳島県で作られたた「麁服(あらたえ)」という麻の反物が供えられるほか、「庭積(にわづみ)の机代物(つくえしろもの)」と呼ばれる全国の都道府県から寄せられた特産物が置かれる。今回の大嘗祭では、各都道府県から3〜5品ずつ野菜や果物、海産物の干物などが供えられ、地域の名産品が多く含まれるので、調べてみるのも面白いのではないだろうか。また、大嘗祭のために備えられる米は、亀の甲羅を焼いて行う占いの「亀卜(きぼく)」によって選び出された土地の「斎田」で育てられ、収穫されたものとなる。
儀式では、これらの新穀を天照大御神を始めとする神々に供え、天皇陛下ご自身も口にすることで国と国民の安寧や五穀豊穣などを祈る。このように、大嘗祭は皇室の重要な行事である一方、かなり時間のかかる儀式でもある。
なお、この大嘗祭が行われる大嘗宮は一般参観が可能となっている。11月21日(木)から12月8日(日)の18日間にかけてが一般参観期間となっているので、興味のある人は足を運んでみてもいいのではないだろうか。
参考記事
大嘗宮一般参観及び令和元年秋季皇居乾通り一般公開について
https://www.kunaicho.go.jp/event/inui-r01aki.html
(山口敏太郎)