パナ社は今年4月に、電源を入れると番組とネットサイトが同じ画面に表示される『スマートビエラ』を発売。だが、民放各社は技術ルール違反としてCM放送を拒否した。
最終的にはパナ社が折れた格好。来年以降、売り出す機種の仕様を見直す方針を民放各社に伝えたのだ。これを受けて、民放各社は9月半ばからCMを放映することになった。
それにしても、おかしな展開だ。パナ社の広告宣伝費は日本でもトップクラス。'12年3月期は746億円だったが、'13年3月期は巨額の損失を出したせいか111億円減らした。それでも635億円の宣伝予算を組む大スポンサーだ。
なぜ、パナ社は屈服し、民放の意向を汲むことになったのか。
こんな見方が浮上した。売れ行きのよくない商品の知名度を上げるための話題作りである。つまり、今回の確執劇は、双方が仕組んだ“猿芝居”という見方だ。ただ、パナ社が大きく仕様を見直すとなれば、同社のデメリットも少なくないわけで、この見方では疑問が残る。
次に浮上してきたのが、家電メーカーとテレビ局とで作る『電波産業会』の圧力である。同会は電波を用いたビジネスの振興等に迅速に対応する体制の確立を目指し、'93年に設立された。
ほとんどの民放トップとパナ社の長榮周作会長も経営諮問委員に名前を連ねている。そこで、仲間内のトラブルはできるだけ避けよう、と実力幹部がとりまとめたという情報が流れている。
「総務省出身で宇宙通信政策課長や内閣官房内閣審議官等をつとめたドン・松井房樹専務理事の鶴のひと声で早めに収束した」(電波業界事情通)
それにしても、いつまでもネットの脅威に神経を尖らす民放の弱腰にはあきれるばかりだ。
(編集長・黒川誠一)