ついに真輔が真のIWGP王者であることを証明した。
3代目ベルト保持者カート・アングルとのIWGP統一戦。中邑はレスリング五輪金メダリストの卓越したグラウンドテクニックに圧倒され、試合序盤で出鼻をくじかれた。高速タックルからバックを奪われて悪戦苦闘。雪崩式のバックドロップで後頭部から真っ逆さまに落とされ、カラダはくの字にグニャリと曲がった。
百戦錬磨のアングルに防戦一方。度重なるアンクルロックを腕ひしぎ逆十字で返したが、幾度となく左足をつかまれ、タップ寸前まで追い込まれた。伝家の宝刀ランドスライド、新技のダブルアームパイルドライバーで爆殺しようとも、アングルの息の根を止めることはできなかった。
それでも一瞬のスキを逃さなかった。3度目のアンクルロックをなんとか切り抜けるや、今度は逆に鮮やかな飛びつき腕十字で捕獲。中邑にとって「ここ一番での大事な技」で必死に堪えるアングルの腕を伸ばし切って13分55秒、とうとうタップを奪った。
試合後は感極まって涙する山本小鉄IWGP実行委員を前に「このベルトは大先輩たちの歴史が詰まってる。IWGPは世界一」と語り「プロレスが一番つえーんだよ!」と叫んだ中邑。IWGPの権威と社運を懸けた一戦でもぎ取った歴史的な勝利だった。
王座統一後の2、3代目ベルトについては「2代目はもとあった場所に戻した方が良いと思うが、ベルトのことはIWGP実行委員会に任せます」と明らかにした。
ミスターIWGP永田裕志でも打ち破れなかったアングルという大きな壁を乗り越えた中邑。王座統一でベルト問題にケリをつけたが、実はその舞台裏で早くも新たなベルト問題が噴出していた。
某IWGP実行委員が嘆いているのは「今後はどのベルトを使用していくか」だ。同実行委員会では来週中にも協議する予定というが、現状では3つの説が挙がっているというのだ。同社フロント幹部がそっと耳打ちする。
「現時点では新しいものを作成するか、2代目か3代目のどちらかをそのまま使うかに考え方が分かれているところです。新しく4代目を作ってしまうのか、いまのベルトを生かすなら2代目と3代目を溶接してリメークするか。はたまた初代ベルトを取り戻して使うか、この3通りのどれかでしょう」。なんと、案の中には現在IGFが所有しているとされる初代ベルトを取り戻すウルトラC案まであるというのだ。
王座統一で始まった新たなベルト問題は今後、一体どんな展開をみせるのか。「2代目でも3代目でもない。IWGPはきょうが始まり」。そうつぶいた中邑真輔の“真時代”が幕を開けた。