元慶應ボーイの金看板で、相方の藤森慎吾とともに、吉本芸人史上最速記録をいくつも打ち立てたのは、およそ15年も前。「武勇伝」ネタで一気にスターダムに駆け上がったが、基礎が固まらないうちのブレイクに周囲のやっかみはハンパなく、あっという間に転落した。11年、中田はインテリ芸人としてクイズ番組に引っ張りダコ、藤森はチャラ男キャラがヒットして、2度目のブレイク。3度目は16年だった。中田の実弟・FISHBOYとダンス&ボーカルユニット・RADIO FISHを結成して、楽曲「PERFECT HUMAN」を配信すると、音楽業界を席巻。「NHK紅白歌合戦」に初出演するミラクルを起こした。
3度の頂点。これほどアップダウンが激しいコンビ芸人はいないだろう。19年は、2人そろった姿をあまり見せていない。藤森は役者として、中田は教育系YouTuberとして稼いでいたからだ。テレビ番組の構成作家は言う。
「中田さんがYouTubeで教育系動画配信をスタートさせたのは19年の春。『中田敦彦のYouTube大学』という“学校”でした。扱う科目は日本史、世界史、文学、現代社会ほか。開設わずか5カ月で、登録者数は100万人を超えました。芸人としても、YouTuberとしても先輩に当たるキングコングの梶原雄太さん(YouTuberでは「カジサック」名義)が1年弱かけて100万人に持っていけたことを考えれば、驚異のスピードです」
「アメトーーク!」(テレビ朝日系)、「しくじり先生」(同)などで披露していたスタンダッププレゼンテーションは、鬼気迫るものがあった。勉強法は独特にしてストイックだが、相応の結果と数字を上げていた。YouTube×教育×お笑いをコンセプトにしたエクストリーム授業がウケる下地が完成されていたのだ。
勉強法を説いた新書本「大合格 参考書じゃなくオレに聞け!」(17年)や、単行本「天才の証明」(同年)は、いずれもベストセラー。19年12月11、18日はついに地上波に進出し、「中田敦彦のSTAND UP STUDY」がテレ朝、AmebaTVで2週にわたってオンエア・配信された。ホストは中田。気になるピカロ(ゲスト)として、初週にYouTuberのヒカル、翌週に「初代バチェラー」で実業家の久保裕丈を招いた。スタンダップコメディ×スタディの30分で、突破力(ヒカル)と捨てる力(久保)を学んだ。
それでもやまない、アンチ中田の声。一部ネットでは、「中田、ウザイ」の書き込みが飛び交い、正義を貫こうとすればするほど、アンチの声が強くなった。オリラジアレルギーは依然として健在。そんな人も20年はぜひ、“教育者・中田”に目と耳と傾けてほしいものだ。
(伊藤由華)