現在、居酒屋業界では、やまや&チムニーグループと酒のディスカウント店『カクヤス』と業務提携した阪神酒販グループがシノギを削っているのだ。
デサントと筆頭株主・伊藤忠の敵対的TOB(株式公開買い付け)バトルが過熱する一方、投資家の間ではもう一つ、庶民に低価格で酒と肴を提供する居酒屋業界のTOBの行方にも注目が集まっている。
「居酒屋チェーンを運営する酒類販売大手の『やまや&チムニーグループ』が、業務提携している『マルシェ』にTOBを仕掛けるのではと噂されています。こちらは敵対的ではなく、発展的なTOBです」(経済ジャーナリスト)
2013年末、酒類・輸入食品のディスカウント店を全国で300店舗以上展開するやまやは、海鮮居酒屋『はなの舞』『さかなや道場』など約750店舗を運営するチムニーを子会社化。以後、やまや&チムニーグループは業界再編に取り組んできた。
「'17年には『八犬伝』や『酔虎伝』『居心伝』などを運営するマルシェと資本業務提携を結んだのです。チムニーは関東圏、マルシェは関西圏に店舗が多いことから補完関係になった」(居酒屋アナリスト)
一方、『牛角』や『とり鉄』など複数の飲食店や居酒屋を運営するカクヤス&阪神酒販グループは“居酒屋の元祖”と呼ばれる『つぼ八』にM&A(合併と買収)を持ちかけたが、つぼ八側が時期早尚と判断したため、失敗に終わっていた。
「しかし昨年10月、やまや&チムニーグループは『つぼ八』を買収したことを発表した。これで、やまや&チムニーグループは居酒屋業界最強のM&A集団にのし上がった。次は資本業務提携しているマルシェの業績が回復し次第、TOBを持ちかけると見られており、実現すればカクヤス&阪神酒販グループを一歩も二歩もリードする」(前出・居酒屋アナリスト)
いずれが覇権争いに勝利したとしても、われら庶民にとっては安くて旨い店であれば文句はない。もちろん、サービス内容も充実させていただきたい。