TPP問題を意識して「やっぱり国産はいい」との安易なパフォーマンスもあるのだろうが、それにしても「体力の消耗戦」と揶揄されるほど壮絶な値下げ競争に明け暮れてきた吉野家が“国会御用達”になった途端にセンセイ方の舌に合わせた豪華版を投入したのはなぜなのか。
吉野家の“脱・庶民派”には伏線がある。持ち株会社・吉野家ホールディングス(HD)が先に発表した8月中間決算は、連結純利益が前年同期比29%減の2億2400万円だった。業績の足を引っ張ったのは同社の本家本元に当たる牛丼チェーンの『吉野家』で、円安に伴う材料費の高止まりから本業の儲け(営業利益)が実に72%減の3億9700万円に落ち込んだ。
これと対照的だったのが吉野家グループの讃岐うどんチェーン『はなまるうどん』で、営業利益は67%増の6億1100万円に拡大、中間期ベースとはいえ、初めて牛丼を上回った。利幅が薄い牛丼で価格競争にウツツを抜かし、既存店売上高の前年割れが恒常化していた吉野家とすれば、これぞ“事件”である。
「吉野家は牛丼の値下げだけでなく、高額商品の投入なども続けてきた。しかし、逆張り商品はライバルも追随しており、生存競争は以前にも増して激しい。そこで東南アジアへの出店を加速する一方、はなまるなど牛丼以外の店舗拡大に取り組んできた。その成果がやっと表れたということです」(証券アナリスト)
『牛重』投入は、どうやらHD経営陣が多角化路線に確実な手応えを得ていたが故の“お遊びメニュー”というのが真相のようだ。