しかし、今年の4月16日、全空連は極真会館の松井館長と共同記者会見を行い、友好団体になると表明している。なぜ全空連が極真会館(松井派)の参加を認めたのか、なぜ寸止めとフルコンタクトの団体が友好関係になったのか。
記者会見で松井館長は、極真内部でも五輪参加を目指す選手には、特別枠で寸止めの稽古をさせると述べている。道場に全空連から指導者を招くというのだ。
果たしてフルコンタクトの選手が、ノンコンタクトで試合できるのだろうか? 再び、緑代表に聞いてみた。
「ノンコンタクトとフルコンタクトでは、そもそも闘い方が違うので、同じルールでは難しいのです。例えば、野球も軟式と硬式は全然違います。レスリングだってグレコローマンとフリースタイルの二つのルールがあります。ノンコンタクトとフルコンタクトは、まったく別物なのです。
直接打撃が危ないというのなら、ボクシングやテコンドーも当てはまります。ヘッドギアをしっかり付ければ、危険は回避できます。大山総裁が創り上げ、守り抜いたのがフルコンタクト空手です。五輪に出るために今までフルコンタクトでやってきた人間が、急にノンコンタクトの試合に出て勝つなんてあり得ません。
逆に考えても、ノンコンタクトの選手がフルコンタクトの試合に出て勝てるわけがありません。それは、ずっと同じルールに従って稽古をしてきた人に対して、失礼ではないでしょうか。入門してきた道場生に対して、指導者は信念をブレさせてはいけません」
極真会館(松井派)が全空連と友好団体になったことについて、疑問視する声も少なくない。あるフルコンタクト空手関係者は、「極真会館(松井派)と公益法人でもある全空連が、なぜ手を結べるのか。極真会館(松井派)は株式会社ですよ。かなりの大物が動いたとの噂も聞こえてきます」と話す。
また、極真会館だけでなく、全空連も日本空手協会を除名、分裂している。純粋に空手を習っている道場生が、一番の犠牲者ではないだろうか。
緑代表が自らの方針を語ってくれた。
「フルコンタクトはフルコンタクトとして、価値を高めていく。一つの道を貫くのが武道です。我々はブレない考え、そして生き方として空手道を教えています。JFKOには現在274流派が参加しており、今年4月には公益社団法人として内閣府より認められました。
この先、空手が五輪種目になったとしても、ノンコンタクトのルールでは、選手を出しません。それは連盟でも意思統一しています。どうしてもノンコンタクトの試合に出たいというなら、我々は指導ができないので、道場を辞めてもらいノンコンタクトの道場に入門して頑張ってもらいます。残念ではありますが、五輪での活躍を期待します。
空手が好き、あるいは大山総裁の創り上げた空手が好きで、フルコンタクト空手をやってきました。指導者は一本筋を通さないといけません。我々はスポーツ空手ではなく、あくまで武道空手が原点です。武道空手の強さや競技の明確さは、見ていただければよく分かると思います。直接技を当てるフルコンタクトの特性によって、人の痛みが分かってきます。
五輪よりW杯の方が盛り上がるサッカーのように、空手も世界大会を盛り上げていこうと思います。フルコンタクト空手が単独で五輪競技として認められる可能性を追求し、さらにメジャーにしていく方針です。
我々は、空手を通して生き方を教えたい。大人から子供まで頑張っている人たちに、世界で闘う舞台をつくってあげたいのです」
10月31日〜11月1日には、東京体育館で第11回世界大会が開催される。これは4年に一度、世界90の国と地域から予選を勝ち抜いた強豪が、世界一を目指して闘う武道空手の祭典だ。
五輪競技化に向け、極真会館(松井派)と全空連が手を結んだが、本当の意味での一致団結とは、程遠い印象は否めない。打算ではなく、空手という一つの道を純粋に進み、本当の団結を願いたいものである。