その発表によれば、TDSの西側にある駐車場を空き地にし、そこに『アナと雪の女王』、『塔の上のラプンツェル』、『ピーター・パン』などのディズニー映画の世界を再現したエリアを設けるという。また、アトラクション以外にもTDRで5番目となる475の部屋を持つ最上位のホテルも新設。拡張により年間500億円規模の売上高増加を見込む。
しかし、TDSではすでに'19年、ハンググライダー形のライドに乗って体験できる『ソリアン(仮称)』、'20年には『美女と野獣』のエリアなど新アトラクションの導入を計画している。それでもなおかつ新開発を決断した背景には何があったのか。
「TDRでは、'16年まで3年連続でチケットを値上げしている。'14年に大人1日券が6200円から6400円に、'15年で6900円、'16年で7400円といった具合です。これにより客の間では“高すぎる”との声が出ているのです」(経営アナリスト)
その上、80年代には1500万人前後の入場者だったTDRが、'13年、TDLとTDSで合わせてとはいえ3000万人を突破、その混雑ぶりに拍車がかかった。
「こうなると、人気のアトラクションだけでなく、飲食店もトイレも、どこもうんざりするほどの人、人、人で溢れかえる。人気アトラクションは休日で2、3時間待ちが当たり前。利用者のイライラ感はかなり強まっていた」(レジャー業界関係者)
それを象徴するかのように、日本版顧客満足度指数(公益財団法人・日本生産性本部調査)では'16年27位、'17年36位と急降下しているのが現状だ。
「好感度、満足度が下がるにつれて、もう一つ大きな問題、ライバルの昨今の奮闘が立ちはだかっているのです」
とはシンクタンク関係者。
まず、大阪に2001年にオープンした、『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』(UDJ)。
「入場客は最初の年こそ1000万人を突破したが、その後は800万人程度に下落した。ところが、'14年に『ハリーポッター』のテーマパークを導入すると'16年に1400万人を突破するなど、USJブームに火が付いたのです」(同)
USJばかりではなかった。中国の香港ディズニーと'16年にオープンした上海ディズニーも、徐々に存在感を高めている。
「特に上海ディズニーはTDRの2倍という広大な土地を持つ。さらに当初こそ、マナーが悪い、ゴミも多い、アトラクションもたいしたことはないと叩かれたが、TDRと比較してもそれほど遜色はないとの声が増えた。しかもTDRより混雑しない。特に習近平国家主席のたっての願いで誕生したという上海ディズニーだけに、政府の後押しも大変なものです」(業界関係者)
それもあってか上海ディズニーは、開園1年目で1100万人と順調な滑り出しをみせた。中国は“あらゆるジャンルで一番”を目指すお国柄だけに、テーマパークなどレジャー部門でもトップを目指す。その目玉事業は、もう一つのテーマパーク、ユニバーサルスタジオ北京も同様だ。ユニバーサルスタジオとしては世界で6番目、アジアでは3番目の施設として'20年オープンを目指し、北京市内に建設中。施設の総工費は8000億から1兆2000億円という巨費を投じ、本場アメリカをしのぐ世界最大規模となる予定だ。
ところで、'17年の世界十大テーマパークの客数は4億7600万人。前年比8.6%増となっている。うち中国の三大テーマパークは1億1000万人を超え、全体の4分の1近くを占めるほど人気が高まっている。そうした中、アジアで最大級のテーマパークだったTDRには、当然ながら中国はじめ海外からの観光客も多く訪れていた。
「現在、TDRには中国人などのインバウンド客が7〜8%で、200万人から240万人。これを'20年の東京オリンピックまでにさらに増やしたい。しかし、今は中国の上海、北京、香港に強烈なテーマパークが誕生し、国内ではUSJが年間200万人からのインバウンド客で賑わっている。かつてのようにTDRの独り勝ちとはいかなくなっているんです。そこを打ち破り、さらに圧勝するためのTDSへの大規模投資ということ」(同)
裏を返せば今度の新開発は、混雑と入場料高騰に不満が溜まった顧客に納得してもらおうというのが最大の狙い。
果たして、35年前の輝きを取り戻せるのか。