ピザの普及や市場動向を調査する、ピザ協議会(日本ハム、伊藤ハムなど正会員、賛助会員35社)の調査では、家庭用ピザやデリバリーピザなどを含めたすべてのピザ市場は2015年度で2657億円。対前年比102%と順調に伸びているという。
「少子高齢化といえど、子どもたちや女性に好かれるピザはバリエーションを増やし、さらに美味を目指すことによって人気が高まり、伸びていくと思われます。そんな中、宅配ピザ市場もしばらく1400億円台で横ばい状態が続いていましたが、ここへ来て、再び伸びる傾向が強まっているのです」(業界関係者)
では、日本KFCはなぜ『ピザハット』を売却するのか。
経営アナリストが言う。
「その理由を幹部らは『アメリカ本部は相当な勢いでの出店を期待した。それに対し、当社はもう少し足元を固めつつやっていきたかった。成長スピードに関する共有意見調整が難しかった』としている。しかし、最大の理由は、'91年に日本KFC傘下になってから積み重なった、累計30億円の赤字がホディーブローのように効いてきたからなのでは」
“御三家”の売り上げ高を見れば、フォーシーズが'87年に設立した『ピザーラ』がトップ(384億円・553店舗='15年11月)。かつて2位を保っていたのが『ピザハット』(154億円・370店舗=同)だった。
「しかし2社は、ここ数年、売り上げで横ばい状態が続いていた。それでも宅配ピザ市場の売り上げ高が伸びているのは、残る『ドミノ・ピザ』や、他のピザ宅配業者の急伸があるからなのです」(同)
『ドミノ・ピザ』は、米ドミノ・ピザの日本子会社であるドミノ・ピザ・ジャパンが運営している。'85年の展開スタート以来、アメリカでも日本でも度々経営権が移り、万年3位に甘んじていたが、現体制に落ち着いてからは売り上げ、店舗数ともに右肩上がり。'14年には『ピザハット』を抜き、現在は売り上げ334億円で472店舗と、『ピザーラ』に肉薄するまでに成長した。
「ドミノが急激に伸びた理由には、業界でいち早くLINEで簡単に注文できるようにしたことにより、若者を中心に顧客が急増したことが挙げられる。また、人手不足を逆手に取って“店頭で購入し、持ち帰るともう1枚無料”といったキャンペーンも当たった。昨年のクリスマスイブにも客が殺到し、その模様がニュースで流れたほどです」(前出・業界関係者)
そのため、『ピザーラ』でも負けじとCMでマツコ・デラックスを起用し、「季節の素材やカニなどの食材をふんだんに使用した期間限定のピザで対抗。当然、ネット注文においても使い勝手を追求している。
一方、これら御三家の牙城を崩そうと殴り込みをかける動きもある。
「本格窯焼きナポリピザを提供する、『ナポリスピッツァ&カフェ』(遠藤商事)。さらには『センプレピッツァ』(Buona Vita)などが、1枚350〜380円という格安さで全国展開を始めている。加えて、牛丼の吉野家HD傘下のグリーンズプラネットも、ワンコインからの『ピッツァナポレターノ・カフェ』を全国展開中です。これらは、宅配ピザが1枚2000円〜3000円と決して安いものではないという弱点を突き、勝負を挑んでいるのです」(経営アナリスト)
一方、味で勝負するピザ店もある。注目は全国主要都市で『ピッツァサルヴァトーレ クオモ』を展開しているワイズテーブルコーポレーションだ。
「イタリア最大のピザ祭りであるPIZZA FESTで3年連続受賞している。さらに、この店舗は全国70店以上を直営FC展開しているが、デリバリーも行っていて、御三家に次いで売り上げを伸ばしています。民間調査会社のアンケートでは、'15年度の宅配ピザ顧客満足度でトップに躍り出たほど。脅威の存在になっています」(前出・業界関係者)
こう見てくると、まさにピザ業界は、ただ単にピザを提供するというだけでは生き残れない業界になりつつある。味、価格、そして接客と顧客の求めるハードルが年々高くなり、それに的確に応える企業が生き残るという流れになっているのだ。
今後、さらに市場拡大が期待されるピザ業界だが、サバイバル合戦はいっそう激化する様相だ。