その理由について、都内の某石材店によると、「決して公営が安いとは限りません。都心に近かったり、交通の便のいい霊園は、かえって高いのです。ただ、ブランド力というか、運営面で安心感があり、宗教不問だったり、年間管理料が安く設定されている点などが人気の秘密ではないでしょうか?」と話す。
東京都内在住者で、現在、墓地を探している人にとっては、都立霊園も選択肢のひとつだ。しかし、その募集は年1回しかない。今年度の申込期間は7月1日〜15日のわずか15日間のみ。つまり、今しかないのだ。
都立霊園は8つあるが、今年度募集があるのは青山霊園、多磨霊園、小平霊園、八王子霊園、谷中霊園、八柱霊園(千葉県松戸市)の6つで、雑司ヶ谷霊園、染井霊園の募集はない。
募集数は青山が50カ所、八王子が80カ所、谷中が170カ所、多磨が430カ所、小平が2270カ所、八柱が2300カ所。
大方は一般埋蔵施設だが、八王子には芝生埋蔵施設、谷中には立体埋蔵施設、多磨には長期収蔵施設(みたま堂)、八柱には合葬埋蔵施設(合葬式墓地)、小平には小型芝生埋蔵施設、合葬埋蔵施設、樹林型合葬埋蔵施設(樹林墓地)、樹木型合葬埋蔵施設(樹木墓地)がある。
ただ、都立霊園の場合、申し込み資格要件があり、「一般・立体埋蔵施設、長期収蔵施設に申込みをする場合」は、都内(八柱の場合、松戸市を含む)に5年以上継続して住んでいること、現在守っている「親族の遺骨」があること、遺骨に対して、祭祀の主宰者であることが条件。「合葬埋蔵施設に申込みをする場合」は在住期間が3年以上となる。
「遺骨生前申込」は3年以上在住で、現在守っている遺骨が1体又は2体あり、その遺骨と親子、夫婦、兄弟姉妹の関係にあることが条件。「生前申込」も3年以上在住が条件。ただ、「遺骨生前申込」「生前申込」が可能なのは、小平、八柱のみで、他の4つの霊園は遺骨があることが前提。
申し込みは郵送(7月15日消印有効)かインターネットになり、郵送の場合、申込書は都庁第一、二本舎1階・2階の案内コーナー、各都立霊園・青山葬儀所及び瑞江葬儀所の窓口、都内各区市町村及び松戸市役所の窓口、公益財団法人・東京都公園協会本社で配布している。
あらかじめ、利用する石材店が決まっている場合(石材を使う墓地のみ)は、申し込みを代行してくれる業者もある。
申し込み後、8月27日に公開抽選が行われ、10月上旬の書類審査を経て、11月上旬に使用料・管理料を納入した上で、12月中旬にようやく使用許可が下りる予定だ。
実際にどれほどの人が申し込んでいるかというと、昨年度の倍率(総括)は、「一般埋蔵施設」だと、多磨=3.6倍、小平=8.5倍、八柱=7.5倍、青山=14.2倍、谷中=12.9倍。小平の「小型芝生埋蔵施設」は4.1倍、八王子の「芝生埋蔵施設」が6.2倍、谷中の「立体埋蔵施設」が6.9倍、多磨みたま堂の「長期収蔵施設」が22.0倍となっており、いずれも倍率は高い。
「合葬埋蔵施設」では、八柱が1.3倍、小平が18.7倍。小平の「樹林型合葬埋蔵施設」が10.6倍、「樹木型合葬埋蔵施設」が1.7倍。
気になる使用料だが、霊園により、まさにピンキリ。「一般埋蔵施設」だと、青山なら約420〜約1085万円、谷中は約268〜336万円と高額。多磨は約158〜518万円、小平は約149〜約471万円、八柱は約34〜約114万円。八王子の「芝生埋蔵施設」だと約112万円、小平の「小型芝生埋蔵施設」が172万円。
年間管理料は1220〜3660円と格安。ただ、墓石を必要とする場合は、さらに石材費+工事費がかかってくる。
これが、多磨みたま堂の「長期収蔵施設」、谷中の「立体埋蔵施設」、八柱や小平の「合葬埋蔵施設」、小平の「樹林(樹木)型合葬埋蔵施設」だとグッと安くなる。
いずれにせよ、都立霊園は人気があり、倍率が高いため、希望しても購入できるかどうかは抽選の結果次第だが、安心感や管理料の安さなどを求めるなら、一考の余地があるだろう。
(山本 生道)
*写真イメージ