ささいなミスにいら立った兄弟子が何度も何度も柔道の絞め技をかけ、弟弟子が失神することもあったという。これを受けてネット上からは、「また暴力問題かよ、もういいよ」、「結局何も変わってないじゃないか」、「本当にウンザリする、なぜなのか」といった失望の声が続出している。
今回の一件において最も非があるのは、もちろん加害者側の力士である。しかし、筆者個人としては、部屋を預かる鳴戸親方の管理不行き届きも一因だったのではとも思う。
各メディアの報道を総合すると、今回の一件を鳴戸親方が把握したのは、部屋のマネージャーから報告を受けた際、とされている。鳴戸親方がこれを迅速にコンプライアンス委員会に報告したこと自体は評価されるべきだろうが、自身の目が届かないところでのいじめ・暴力を許したという点については“甘い”と言わざるを得ない。
一昨年から昨年にかけて、相次いで角界を揺るがした暴力問題。これを重く見た協会は昨年12月に暴力禁止規定の制定や、前述のコンプライアンス委員会の新設など、暴力根絶の姿勢を強く打ち出していた。
世間から厳しい視線が向けられていることも含めると、普通ならば弟子に対して今まで以上に気を配った指導を行うはず。もちろん、鳴戸親方も親方なりの考え方・やり方で指導をしていたのだろう。ただ、今回のような一件が起きてしまった以上、それらの方針は間違っていたと言われても致し方ないのではないだろうか。
現役時代から現在に至るまで、根強い人気を誇っている鳴戸親方。これまで積み重ねてきた評価をフイにしないためにも、鳴戸親方には今回の一件を教訓とし、新たな「親方像」を模索・確立してもらいたいと切に願っている。
文 / 柴田雅人