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実話怪談『佇む少女』

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 千葉県には多くの怪談が伝わっていますが、僕が聞いた話もそんな現代の伝説のひとつなのでしょうか。

 僕の妻の父、つまり義父は、生まれてこのかた60年船橋市に住んでおり、船橋市内の事ならかなり細かい部分まで熟知しております。

 日頃は無骨で無口な義父が、必要以上にやたらと恐れる場所があるのです。

「あの場所だけは、行ってはいけない」

 義父は怯えながら、繰り返し警告を発します。

 ですが、現在ではなんの変哲もないマンションであり、僕は特に不審に思いませんでしたし、友人も住んでいたので度々訪問しておりました。

「はいはい、わかりました」

 義父の警告に、僕は適当に合わせながら、友人の家に遊びに行っていたある日の事、友人が妙な話をしました。

「このマンションさぁ、幽霊が出るんだよ」

 この言葉に僕は一瞬、言葉を失いました。

「まっ、まさか、今時、こんな近代的なマンションで」

 友人は暗い顔のままでこう続けました。

「でも、確かに出るんだよ、廊下にさぁ…、女の子がずっと立ってるんだ」

 この話に僕は背筋に悪寒が走りました。(やはり、義父の言った事は本当だったんだ、やばいかもしれない)

 帰宅した後、気になったので、あのマンションが建つ前に何があったのか義父に聞いてみました。

 すると、こんな事を言いだしたのです。

「昔、あそこには、大きな池があってな…」

「そっ、それで」

 僕は義父に喰らいつきました。すると義父は、言いにくそうな表情を浮かべ、こう続けたのです。

「その池で溺れ死んだ女性の霊がなぁ、毎晩のようにひとりさみしく佇んでいたんだ」

 そういうと、紙とペンを取り出し、敷地の中の様子や、池の場所、女の霊が佇んでいた場所を記してくれたのです。

「こっ、この場所は…」

 僕は震える手で紙を見つめました。

 義父が記した女の霊が佇んでいた場所は、友人が霊が出ると言っていたマンションの廊下の場所だったのです。

 時代が変わり、建物が建っても女は同じ場所に立ち続けているのでしょうか。

監修:山口敏太郎事務所

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