「3週間以上の咳の場合、時として肺がんが関係していることもあります。高齢者では、胃食道逆流症や副鼻腔炎、そしてうっ血性心不全などといった呼吸器以外の疾患が原因であるケースもあります。これらの可能性も考慮して、正確な診断を得るためには専門医の受診が必要です。また長引く咳で受診したときは、必ず胸のレントゲンを撮って貰うようにしてください。結核への疑いもあるため予防の意味もあります」(同)
次に、こうした咳が出やすい環境について考えてみよう。はっきり言える事は「口、鼻、のど、気管支、肺」は常に空気に接触しているため、空気の環境が大きく左右するということだ。
空気中にはさまざまな浮遊物質が漂う。工場、クルマの排ガスによる汚染(化学物質)の増加などが、咳の原因になる。また、過労やストレスでも咳が出る。そのためには、外気だけでなく室内環境も見直さなければならない。気管支喘息の発作の引き金になるアルゲン(ダニやゴキブリ、カビなど)を排除する必要がある。また前述の通り、気温が低く乾燥するとウイルスが飛散、さらに呼吸器粘膜の乾燥により炎症が起こりやすくなっているため、咳が出やすい。
さらに、シックハウス症候群の原因になるホルマリン、トルエンなど化学物質でも咳が出る。タバコや花火の煙などでも咳が出るが、刺激の強い匂いによっても咳は出てしまう。「いつ出るのか、どんな咳が出るのか。喘息なのか」など自分の咳の原因をしっかりと認識することが大事である。
咳を抑える薬もいろいろあるが、大きく分けると乾いた咳は中枢性鎮咳薬、湿った咳には末梢性鎮咳薬が中心になる。中枢性鎮咳薬は咳中枢の反応を抑え、咳反射を抑制するいわゆる鎮咳薬。末梢性鎮咳薬は気道粘膜の神経刺激を抑制する去痰薬、気管支拡張薬がある。
「ただし薬は正しく使わないと効果はない。抑えた方がいい咳の場合は、咳が出始めた時に飲むのがいいし、いつ、どんな咳が出るのか、自分の咳をしっかりと認識することが大事です」(専門医)
最後に、自分でできる咳を鎮める簡単療法をお伝えしよう。
1 入浴=40度ぐらいの湯に20〜30分ほど浸かる。体が温まると痰を柔らかくするので、痰を出しやすくなる。
2 咳による寝不足の対策=寝不足になると「寝不足だ」という心理的な要素が働き、喘息が悪化するなど咳が酷くなる。これは気道炎症が刺激されるためだが、まず咳を抑えることが重要。咳止めや気管支拡張薬や吸入ステロイド療法を続けながら鎮める必要がある。
3 加湿=乾燥は大敵。加湿器、空気清浄機の使用を薦める。加湿することで、痰が出やすくなる。飛沫が乾燥せず、飛沫の飛ぶ距離が短くなる。ノドの乾燥を防ぎ、炎症を抑える。
4 食事療法=咳を鎮める主な食べ物は、にんじん、ゆり根、黒豆、銀杏、黒ゴマ、アロエ、カボチャの種、干ししいたけ。乾いた咳には、なし、大根、ハチミツなど。湿った咳には、ゆず、生姜、銀杏、くるみなど。
5 咳が出るとき食べない方がいい食品に注目=豚肉、ナマコ、ブリの刺身、もち米、タケノコ、餅菓子、柿、酢、ナス、エビ、カニ、辛子、コショウなどの調味料は避ける。
いずれにせよ、単なる咳だと思って甘くみていると、痛い目に遭うぞ!