「中朝国境の鴨緑江のすぐ対岸にある新義州は、インドネシアやモロッコなど中国人がビザなしで行ける数少ない国というだけでなく、新義州に限れば、パスポートも不要ですから人気なのです。2015年12月には、日本人にも日帰りや1泊2日での新義州観光が認められ、新しい北朝鮮観光の兆しを感じさせたものの、それからわずか半年足らずで事実上の終了となり、以降3年ほど中断していました。それが、ゴールデンウイーク直前の4月末、日本人を含む中国人以外の外国人向けの新義州日帰りツアーが再開されたのですが…」(北朝鮮ウオッチャー)
それが突然の中止とは、何があったのだろうか。
「北朝鮮国内には外国人を担当する旅行会社が、経済制裁から除外されている外貨獲得の号令一下、雨後のタケノコのように増えて、競争がしれつを極めています。観光業を通して北朝鮮を水面下で支援したいという中国側の意向も働いています。ですから中国の旅行代理店も加わって、旅行会社同士の利権争いや足の引っ張り合いなどが頻繁に起きているのです。全面中止には、それが原因にあるのかも」(別のウオッチャー)
そもそも今回、中国人以外の外国人受け入れを再開したのは、旅行単価を上げることが目的と考えられる。現在、中国人向けの日帰りツアーは約500元(約8000円)で、1泊しても800元(約1万2800円)もしない。
それが日本人であれば、同じようなホテルと食事、観光地周りで中国人の5倍近くも稼げる。外貨を少しでも稼ぎたい北朝鮮にとっては、日本人誘致は現実的な選択肢と言える。それだけに不可解さが募る。
「何でも再開後に訪れた『第1号日本人』が新義州で問題を起こしたからとの回答があったようなのです。何やら韓国ソウルの空港で、職員を相手に大暴れして、拘束された厚労省の課長の一件もあるので、さもありなんとは思わせようとしているのでしょう。だいたいこの理由は怪しいですから。なぜなら新義州自体は日本人も観光できますが、その前に平壌へ入って帰路に平壌から『朝鮮国際旅行社』のガイド付きでないと新義州へ立ち寄ることができません。ですから時間的に、日本人観光客が『第1号』というのはあり得ないのです」(同)
朝鮮半島では都合が悪かったり、説明できない不手際を覆い隠す場合、「日本人のせい」が常套句になっているようだ。