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2011年甲子園 群雄割拠の夏 栄冠を掴むのは誰だ…

 7月12日、高校野球千葉県大会。暑さも忘れさせるような大熱戦が繰り広げられた。専大松戸対千葉明徳(市原市臨海球技場/第1試合)の一戦だ。この試合は「2回戦屈指の好カード」「プロ注目の好投手の投げ合い」とあって、収容人数約1000人の小さな地方球場は試合開始と同時にほぼ満員となった。

 専大松戸・上沢直、千葉明徳・鈴木康平(ともに3年生)の両投手は、ともに前評判以上の好投手だった。
 両投手とも右のオーバーハンド、手元で浮き上がってくるストレートが武器で、上沢投手はコントロール抜群のスライダーとカーブを、鈴木投手は左打者の膝元にも決め込むスライダー系の変化球も持ち球にしていた。結果は6対6で引き分け再試合…。通常、高校野球では延長戦は15回まで行われるが、千葉県には『特別規定』がある。
 「1日3試合が予定され、その試合が同日の最終試合でない場合は、3時間30分を経過した時点で新しいイニングに入らない」というもの。両校陣営とも戸惑ったとし、批判的な速報記事もあったが、むしろ両校の球児たちは救われたのではないだろうか。

 炎天下で上沢投手は10回を、鈴木投手は11回を投げている。当然、両投手の体力的・精神的疲労は並大抵ではない。また、試合終盤、熱中症のような症状を見せ、途中交代した選手もいた。臨時代走も使われ、背番号9をつけた選手が内野にも入った。暑さに集中力を奪われたため、考えられないようなミスも出た。足の痛みを訴え、仲間の肩を借りてベンチに下がる選手もいた。まさに消耗戦であり、『特別規定』がなければ、負傷者はもっと増えていただろう。

 試合は千葉明徳が先制し、専大松戸が同点に追い付き、逆転に成功。9回表に千葉明徳が二死から再逆転したが、その裏に再び同点に追い付かれた。10回表・裏の攻防も見応えがあり、同点に追い付かれるということは、サヨナラ負けの窮地が続くわけだ。観戦者は暑さを忘れ、そんな緊迫したプレーの連続に引き込まれていった。前評判以上の好ゲームが繰り広げられたのは、好投手の存在だけではない。ともに鍛え抜かれた守備のチームであり、失策が出た直後でも、笑顔で次プレーに向かおうとする団結力が見られた。

 結束力の強いチームは、試合を重ねながら強くなっていく−−。
 これは、上位進出に成功した高校でよく聞かれる言葉だ。両校にはその可能性がある。これ以上の負傷者を出さないため、球児の集中力を奪わないためにも…。『特別規定』が両校の明日を守ったと言えるのではないだろうか。(スポーツライター・美山和也)

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