何時もイライラしたり怒ってばかりいる人は、健康を害するばかりか、さまざまな病気の引き金になる恐れもあると主張するのは、東京多摩総合医療センター・精神科経科担当医。
「怒りという感情を頻繁に高ぶらせていると、自律神経を乱し、交感神経を活発にさせる。すると、心拍も血圧も上がって血管が収縮するため、血流が悪化。全身の細胞に栄養が行き渡らなくなり、心臓病や脳卒中なを誘発することになります」
さらに、こう続ける。
「怒りのスタート地点を探ると、脳の扁桃体(へんとうたい)という部分に当たります。扁桃体は自分自身への脅威を察知すると、体にストレス反応を起こすホルモン、アドレナリンを分泌させる。その作用で心拍や血圧、呼吸の数の増大、骨格筋への血液増加、発汗などが起こります。これがいわば、怒っている時の体の状態です。この自律神経系の異変を再び扁桃体が感知すると、さらにアドレナリンを分泌させ、怒りの感情を大きくしていくといわれています」
健康法と言えば「(アルコール)を飲み過ぎない」「食べ過ぎない」「適度な運動を!」と、日ごろからいろいろと気を使っている人は多いだろう。しかし、攻撃的で怒りっぽい性格の人は別。
スペインのサンカルロス大学病院の研究チームが、過去に脳卒中を発症したことのある150名の成人と同じ地域の健康な成人300名(平均年齢54歳)を対象に比較研究を行った。
研究協力者の日々のストレス度を調べながら、不安の有無やうつ症状、一般的な健康状態、行動パターンに基づいて分析。その結果、慢性的なストレスは脳卒中のリスクを高めるという結果に達した。
「この研究で、性格的な特徴も大きな影響を及ぼしていることが判明した。競争心が強く攻撃的でイライラしやすく、怒りっぽい性格の人は、健康な人の2倍ほど脳卒中のリスクがあるという結果になったのです。これは、喫煙者と同レベルのリスクの高さ。しかも、さらに高いリスクを示したグループもあった。それは親友や近親者との死別など精神面で衝撃を受けた出来事を前年に経験したグループ。いずれも脳卒中になるリスクが健康な人の4倍近くにも上ったのです」(健康ライター)
重要なのは、怒りによってほんの一瞬でも自立神経を乱すと、その乱れが簡単には元に戻らないということ。研究データによると、一度乱れた自律神経が正常化するには、3時間程度の時間を要するという結果もある。