キューバ戦では審判の判定に抗議、あわや退場のシーンまであった星野監督。不調のダルビッシュ有を引っ張り過ぎた采配ミスを指摘され、野手の起用法にも疑問の声が上がるなど、批判の矢面に立たされた。
報道陣を前にしてナインはしょげていたが、そんな沈滞ムードを一掃しようとしたのが、誰あろう星野監督だった。現地で取材するスポーツ紙記者はこう言う。
「宿舎に戻るバスの中で『(キューバ戦は)反省して、忘れればいい。準決勝か決勝で、また戦うことになる。その時にやり返せばいいんだ。今はこの先のこと、まずは目の前の台湾に集中しろ』とゲキを飛ばしたんです。キューバ戦での審判への抗議も、計算ずくのパフォーマンスだったのかもしれません」
さらに、星野監督のしたたかな読みを推理してくれた。
「キューバ戦の敗戦は、ある程度覚悟していたのではないか。調子の良くなかったダルビッシュをすぐに替えなかったのは、ダルビッシュに投手の柱であることを自覚させるため。ナインにもそれを、あらためて浸透させたかったのだと思う。救援陣が引き締まった投球をしていたことからも効果てきめんでした」
その後は、台湾、オランダと2連勝。ナインにようやく笑顔も戻ってきて、そして迎えるのがキューバに続く強敵と警戒している今夜の韓国。接戦になると見るのが大方の予想だが、星野監督はそうは思っていないふしがある。
一昨日の韓国VS中国戦に、そのヒントが隠されている。降雨のために2度の中断を余儀なくされ、その揚げ句がサスペンデッド。明日17日に6回裏1死、韓国の攻撃から再開されることになった。
17日は1次リーグの休養日に当てられていた。それを韓国はつぶされるばかりか、事実上8連戦を強いられることになったのだ。
「どのチームも投手中心の編成ですが、韓国はローテーションの変更を迫られることになったわけです。日本戦の後に、台湾戦(18日)とキューバ戦(19日)が控えている。日本戦に総力を上げて戦うということはできない。前半に日本がセイフティーリードするようなら、あきらめてもおかしくないでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
中国がタイブレークの末、台湾に勝ち、勢いに乗っているのも韓国には嫌な材料だ。
対照的に星野ジャパンには、岩瀬―藤川―上原の必勝パターンが完成。田中が2戦好投、川上も使えるメドが立ち、投手陣に余裕が生まれた。
星野監督から、中国入りしたころの悲壮な表情は消えている。選手掌握術のうまい策士に、韓国の突然のタイトなスケジュールも味方する。今夜、韓国を一蹴(いっしゅう)すれば予選突破、ベスト4が見えてくる。