医療ジャーナリストの外岡立人氏が次のように警鐘を鳴らす。
「1918年のパンデミックから100年、人類はいまだ鳥インフルの拡散を克服できていない。確かに公衆衛生面で改善はしましたが、万能ワクチンが開発されない限り、新規のウイルスが世界に大惨事を起こす危険性があるのです」
日本国内以上に気がかりなのが、“世界中の鳥インフルが存在する”とも言われる隣国の中国で、猛烈な勢いで広がっているとされるH7N9のタイプ。家禽類から人への感染力を持ち、2013年から拡大し、今や中国全土で感染者が見られる状況だ。
「心配なのは、中国が家禽類を対象として奨励している鳥インフルのワクチンです。日本では感染が明らかになった養鶏場では、すべての鶏を殺処分することが家畜伝染病予防法によって定められています。財政的な補填は国から出るが、養鶏場の経営者には風評被害という大きな負担がのしかかる。そのためワクチンで防疫したほうが合理的だという要望が、養鶏関係者から噴出したこともあります。しかし、ワクチンを接種した場合、家禽は感染しても発症することはないが、少量ながらウイルスを排泄してしまい、中国のように人間の手には負えなくなってしまう危険があるのです」(同)
しかも、ワクチンによって抗体を持った鶏の中で、ウイルスの変異が促されてしまう場合もあるという。それにもかかわらず、ワクチンによって鳥インフルを抑えることができたのかどうかも含め、中国国内の実態がまったく伝わってこないのだ。
「H7N9は変異を続け、現在は24時間で鶏を殺す最強の鳥インフルになっているとする中国の専門家もいます。H5N6型などは一般の人には感染しにくいが、それでも変異によって人から人へ感染する能力を持つ場合もある。また、昨今の研究で、発病者から発せられたインフルエンザウイルスの粒子は、数分から数時間大気中に浮遊していることも判明しているのです」(サイエンスライター)
今シーズン、鳥インフルエンザは香川県の養鶏場で発生しているほか、野鳥からは島根県と岩手県、東京都で確認されているが、京都府まで及んでいるとなると、全国規模に蔓延する可能性は高い。平成30年が“鳥インフルイヤー”とならなければよいが…、パンデミックの予兆が懸念される。