しかし、そんなオヤジたちの奮闘によって、ティーンエイジ・高橋の育成ビジョンを軌道修正しなければならなくなった。
一塁・森野(将彦=33)、三塁・高橋−−。高木監督を始めとする中日首脳陣はそんな構想も口にしていた。それは「いつ実現させるのか」は明かしていないが、
「早ければ、今年。それも球宴明けに実現するかもしれない」
と見る関係者も少なくなかった。
当事者には失礼だが、こう予想されていた。まず、一塁手で4番も務めたブランコは「落合博満・前監督だから使いこなせた選手」と目されていた。落合前監督は「4番の一発で試合が決まる時代は終わった」と解釈し、上位打線が出塁し、チャンスメイクする攻撃スタイルを構築してきた。ちょっとキツイ言い方をすれば、新体制ではあまり評価の高くないバッターである。だが、「捨てるには惜しい」と思ったのか、今季は“様子見”で残留させた感も否めない。
「山崎に関しては、まだやれると見ていました。でも、指名打者制のないセ・リーグでフルシーズンは戦えないだろうとも思われていました。和田一浩? 高木監督が期待している選手の1人ではありますが、一時期のような爆発力までは期待していなかったと思います」(プロ野球解説者の1人)
ブランコ、山崎、和田がイマイチとなれば、新しい4番バッターを探さなければならない。その筆頭候補と目されていたのが森野だった。
「森野を三塁から、守備の負担の少ない一塁に固定させるつもりでした。高橋に三塁を守らせ、将来のために少々のミスが出てもスタメンで使い続けるという…」(前出・関係者)
しかし、山崎の好調ぶりを受け、『三塁・高橋』の構想は先送りになった。
「高木監督も『山崎は活躍する』とにらんでいた部分もあったんじゃないかな。キャンプ終盤、高橋にショートでノックを受けさせたのは荒木(雅博=34)、井端(弘和=36)のどちらかが怪我で出られなくなったときに備えてほしいという意味もあったんでしょう。山崎が元気なら、森野は三塁から動かせない。高橋が試合に出られるのは、内野のレギュラー陣に何かあったときだけだから」(前出・同)
シーズン中盤以降、ベテランの山崎を休ませる目的で「一塁・森野、三塁・高橋」が実現する可能性はある。しかし、ここに来て、「高橋に外野の練習も始めさせる」との情報も出始めた。実戦のなかで育てたいと思っているが、守らせるところがない…。ベテランの奮闘は嬉しい誤算ではあるが、中日の世代交代と黄金ルーキーの成長は少し遅れそうだ。