今場所10勝以上を挙げれば、特例での大関返り咲きとなる関脇・栃ノ心。16日に行われた5日目北勝富士戦の勝利で初日から5連勝とし、早くも折り返し地点に到達した。
立ち合い左足を鋭く踏み込み、左の前廻しを取った栃ノ心。そこから右も差して万全の体勢に持ち込むと、最後は土俵際で粘る相手を自慢のパワーで土俵外へ。昨年九州場所から3連敗を喫した相手を返り討ちにした。
この5日間の決まり手は、寄り切りが4回に吊り出しが1回。栃ノ心の持ち味といえば、怪力を生かした四つ相撲だが、それをしっかりと実践できていることが無傷の要因となっていることは疑いようがない。
今場所対戦が予想される力士の中で、同格以上は鶴竜、豪栄道、高安、逸ノ城の4名。つまり、格下から順当に星を稼げば、それだけでノルマの10勝以上に到達する。こうした情勢を受けてか、各メディアはポジティブな報道を多数展開している。
ただ、ここまでの序盤5日間が順調だったからといって、大関復帰を楽観視するのはまだ早い。大関昇進以降の出場4場所を振り返ってみると、6日目以降の中盤・終盤戦はあまり芳しくない成績が続いているからだ。
「7勝8敗」で大関の座を失った先場所は、「3勝2敗」で迎えた6日目から「4勝6敗」と失速。仮に今場所も同じことが起こるとすると、「9勝6敗」でまたしても僅差で涙を飲むことになる。
また、昨年の九州場所と秋場所における中盤・終盤戦を見ても、前者は「5勝5敗」、後者は「6勝4敗」。怪我の影響があったとはいえ、圧倒的な成績は残していない。
そもそも、その怪我の発端となったのは昨年7月場所の6日目玉鷲戦。この一番で負傷した栃ノ心は翌7日目から休場を強いられ、新大関でいきなりカド番転落という屈辱を味わっている。
「好事魔多し」とはよく言うが、角界でもそうした事例は枚挙に暇がない。調子のいい今だからこそ、より慎重な姿勢が求められている。
文 / 柴田雅人