「やり取りをしている頃から、ネガティブな勘違いをするとずっとそれを引きずるタイプの女性でした。自称メンヘラでしたし、地雷かなとは思っていたのですが、なんとなく放っておけなくて、直接会ってからは男女の関係になって。自分としては付き合っているつもりでした」
ところがある日、Tさんは、その“メンヘラ女性”ととんでもない修羅場を迎えてしまう。
「会うなり、彼女は自分の手を取って何かを握らせてきたんです。見たら、けっこうな刃のカッターナイフでした。彼女は、『とにかく私を殺して』の一点張り。首を切らせようとしてくる彼女を、力づくで阻止しました。とにかく落ち着かせようと、自分の家に連れて行ったんです。そこで言われたのが『あなたのことは一番じゃない。本当は彼氏がいる』と。それだけでもショックだったのですが、『じゃあ二番目なんだね?』と聞く自分に、彼女は『ううん、彼氏のほかに二番目の彼氏がいる』と⋯⋯。絶句する自分に『一番目の彼氏も二番目の彼氏にも、飽きられている可能性がある。だからあなたと一緒にいた。それなのにあなたに優しくしてもらっている自分が許せない。だから殺して』とたたみかけてきました」
これだけでも十分に修羅場と思えるが、Tさんに訪れた真の修羅場はこの後だったという。
「疲れ果ててしまったし『いったん寝て休もう』ということになって。目を覚ましたら、シャワーの音と、すすり泣く声が聞こえてきたので、風呂場を見たら、取り上げたはずのカッターナイフで、彼女が手首を切りつけていたんです。血まみれで、指先もズタズタになっていた彼女から、急いでカッターナイフを奪い取りました。『どうしてこんなことをしたの?』と聞くと、彼女は『あなたが何も言ってくれないから。今日はセックスもしていないし、落胆したでしょう。だから死にたい』と言い出して。意味が分かりませんでした。この後、どう収拾をつけたのかは覚えていないです。思い出したくもないのかもしれません。いつの間にか、向こうから連絡が途絶えて自然消滅しました。結局、自分が彼女に捨てられた形になりますね⋯⋯」
必ずしもメンヘラが危ない女であるとは限らない。だが、中にはTさんの元カノ(?)のように、「メンヘラの女性は危ない」と思わせてしまう女性は実在するようだ。
文/大久保 舞