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キャバ嬢が生まれる瞬間(82)〜独立に失敗しキャバ嬢になった香〜

牧田香(仮名・25歳)

 私は昔からネイルが大好きで、高校を卒業した後は、定期的にネイルサロンに通っていた。なぜここまでネイルに魅了されているかというと、常にいつ何時も見つめていられるからなんだよね。女の子ってオシャレが大好きだから美容院で髪型を整えたり、ブランドの服を買ったりすると思うんだけど、そのどれもが鏡と対峙しなくちゃ、可愛くなった状態を確認できない。でもネイルはすぐ肉眼で見られるから、塗ってしばらくはとても心がワクワクしてる。

 だからネイルの仕事がしたいと思うのに時間はかからなかった。ほどなくして私は、未経験OKのネイルサロンの求人広告に応募し、池袋でアルバイトを始めた。働いて得たお金は無駄使いはせず、ちゃんと貯める日々。なぜなら自分のネイルサロンを開きたかったから。

 でも数年後、開業資金を貯めて独立したのはいいのだけど、現実は厳しいものだった。レンタルスペースの家賃や道具代などを払うためには、かなり多くのお客さんを捌かなければならず、赤字続き。でも今時、ネイル店なんて世間には氾濫してるからそこまでお客さんはやってこない。だから、夜は出会いを目的としたパーティーなんかに出かけて、そこで男性に色目を使った。

 何十人もの男と連絡先を交換し、後日、雑談がてら「メンズ用のネイルもあるんですよ」って声をかければ、相手は私と2人っきりになれるからって意外と誘いに乗ってくる。でもそんな日々を続ける毎日に、私は疲れてしまって店は畳むことにした。どうせ男性に媚を売るのなら、もっと稼げる仕事をしようって。だから私はキャバ嬢になった。働いてみて思ったのは同僚に将来ネイルサロンをやりたいっていう女の子達がとても多いということ。みんな将来は自分の店を持ちたいって夢を持っているんだよね。でも私は甘くないよって言ってあげたい。めんどくさいから何も言わないけどね。私はこのまま給料を貯金して、それなりの相手を見つけ次第、すぐ結婚しようと思ってます。もう独立なんて夢は見ていません。

(取材・構成/篠田エレナ)

写真・Don Fulano

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