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キャバ嬢が生まれる瞬間(81)〜彼の夢を応援したい真美子〜

上田真美子(仮名・24歳)

 彼とは友達に招待された飲み会で知り合った。騒がしい場所柄、出席者の中でも特に口数が少ない彼は、逆に目立っていた。特に興味があったわけじゃないのだけど、1人が可哀想に思えて、それとなく私から話しかけてみた。すると彼はバンドマンで、毎月、ライブハウスで演奏しているということがわかった。ミュージシャンと言っても、まだ全然売れていない無名かつライブは小さい場所で対バンするぐらいの実力だった。

 その日は連絡先だけを交換して別れた。その後、何度かメールをして、一緒に出かけたりするような仲に。そして彼の部屋へ遊びにいくまでには、そんなに時間はかからなかった。その部屋は6畳一間で、置いてあるものは敷布団と小さな本棚。そして片隅にギターが立てかけられていた。そんな彼は音楽で食べていけるわけもなく、ライブ以外の日はスーパーで品出しのバイトをしているという。

 たとえ売れていないとはいえ、東京で夢を追いかける彼の姿が美しかった。私といえば、たいした夢もなく日々ダラダラと過ごす、ただのフリーター。だから、いつからか彼の夢を応援したいという気持ちが強くなったんだよね。でも音楽の知識があるわけじゃないから、その道でバックアップすることはできない。だけど、お金でなら助けることができると思った。

 彼の生活費、服代、音楽の機材など、少しでも支えたいから、私は居酒屋のバイトを辞めてキャバクラで働くことにした。それから彼の欲しいものは、なるべく買ってあげている。でもここの所、不安に思うこともある。もしも彼が売れたら私は捨てられるんじゃないかって。過去の有名ミュージシャンを見ても、ミスチル、GLAY、そして最近はゲスの極み乙女。とか、売れない頃に支えてきてくれた奥さんから皆、有名人に乗り換えてるよね。でも私の彼だけは、そんな人じゃないって信じたい。いくらお金を払っても惜しくないから、はやく有名になって、私と結婚してほしいって思います。

(取材/構成・篠田エレナ)

写真・the_black_room

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