迷いはない。「自分の競馬をする。今回もハナを切っていくだけ」と芦谷助手は言った。
前走のマイラーズC、コンゴウリキシオーは見事な逃げ切りVを決めた。女傑スイープトウショウ以下をレコードで完封。圧巻といえるほどの強さだったが、決して恵まれた勝利ではない。
それまで1800〜2000mを中心に使われており、マイル戦は初めて。にもかかわらず積極的に飛ばした。
「速いラップを刻みながら最後にもうひと粘りしてくれた。折り合いに気を使わない距離で、かえってそれが良かったのかもしれないね。でも、かなり強い勝ち方だった。しかも、右前を落鉄しながらあの内容だから」と振り返った。
マイラーズCの後はダート路線や金鯱賞に向かうプランもあったが、あれだけのパワーとスピードを発揮すればもう迷う必要はない。中間は目標を安田記念1本に絞り調整された。
見栄えするたくましい馬体は相変わらず。1週前追い切りは23日に栗東坂路で行われ、800m51秒2→12秒2の好時計。併せ馬できっちり追われた。また26日にも800m55秒6→12秒1をマークしており、この春3走目でピークを迎えた印象だ。
今朝は藤田騎手を背に、同じく坂路入り。2F目から加速し始め、終いまで脚色は一切乱れない。800m51秒2→36秒8→12秒4をマークする絶好の動きを披露した。
「テンションを上げすぎないよう、それだけを心がけてきた。前回と同じ状態で送り出せる」芦谷助手の物静かな口調に自信がにじみ出ていた。
相手はそろった。昨年、秋の天皇賞とマイルCSを制して最優秀短距離馬に選出されたダイワメジャー、スズカフェニックスも高松宮記念でGIを制した勢いそのまま。香港からも強豪がやってくる。
それでも期待は揺るがない。東京の芝は一昨年のダービー(11着)以来だが「阪神であれだけやれたら」と同じ直線の長いコースを制した自信は相当だ。
父ストラヴィンスキーはジュライCを圧勝するなどした99年の全欧チャンピオンスプリンター。波乱続きのGIロードで、受け継いだ「短の血」を爆発させる。