ブレーカーと言えば、必ず何処の家にも一つは存在する。よく電気を大量に使用すると、全電源がいきなり落ちて、ブレーカーのスイッチをONに戻すと、電気が復旧して流れる装置である。
ブレーカーには特に耐用年数が決められていない。一つの家を建てると、たいていはその家を取り壊すまでは取り替えることがない装置である。このブレーカーに不備があると、漏電火災の原因になるのは事実である。だが、その件数は余り聞くことがない。
A君の入社した会社は、このように古いブレーカーを新しい物に交換することを売る営業だった。築20年以上の古い物件を探しては、ブレーカーの点検だと称してブレーカーを見させてもらい「これは耐用年数を超えていますので、至急交換しないと火災の原因になって危ないです。新しいブレーカーと交換しませんか」と家の人を不安がらせる。
多くの場合はブレーカーを見て、交換した方が良いでしょうと言うと、大概家の人は交換することをお願いすると言う。その価格は工事代を含めて15万円である。家の住民は殆どが年金暮らしの老人だから、そんな大金を持っている場合は少ない。そこで、営業が3年のローンを組ませて売るのである。ローンは中間に信販会社を挟むので、買った人間の支払いが困難になっても会社側は無傷で済む。
更に恐ろしいのは、このブレーカーの原価は何と1万もしないと言う。それを15万円で売るのだから、当然儲けは馬鹿にならない。
ちなみに、営業と工事作業車は殆ど同じ行動を取り、工事作業車は営業の行く付近で待機している。そしていざ交換となると、10分もしないで工事の人間が来て、その場でブレーカーを交換するのである。
A君の場合は良心の呵責にさいなまれて、入社後僅か1週間で退社したという。その際、電力会社にこのような詐欺会社があっても放置するのか質問したと言う。そのときの電力会社側の言い分では、「特に詐欺商法ではないのでこれを取り締まることは出来ません」と言ったという。
(藤原真)