1989年の初回以来、96年までのおよそ7年で、合計19回も放映。“クイズ”とは名ばかりで、莫大な予算をかけて、過激な罰ゲームに挑戦させる。大掛かりな企画、派手なリアクション、倫理は皆無と思わせるような安全対策など、芸人からするとまさに身を削るラインアップが並べられた。
同番組を象徴するゲームとして、いまだに秘蔵映像系番組で流されるのは、「溺死寸前! バス吊り下げアップダウンクイズ!!」。これは、出題されたクイズに対して、芸人たちが「○」か「×」の大型バスに乗車。不正解のバスはそのまま巨大クレーンに吊り上げられて、ゆっくり大海に沈められる。窓が開いた大型バスには、すさまじい勢いで塩水が侵入。万事休すという、まさにその時、芸人たちはバスの屋根に逃避する。ギリギリのところで事なきを得たが、大荒れの大海で必死に生きようとする芸人の様子は、史上最高傑作シーンといえる。
ちなみに、このときに生まれた名言が、「聞いてないよ〜」。たけしの暴挙に対して、ダチョウ倶楽部・上島竜兵が放った心の叫び。のちにこんなにポピュラーになろうとは、誰もが予想しなかった。
番組前半期は、このダチョウをはじめ、たけし軍団のダンカン、ガダルカナル・タカ、井出らっきょ、そして、松村邦洋などが台頭した。しかし、この“アップダウンクイズ”が放映された第9回大会を機に、ナインティナイン、出川哲朗、キャイ〜ンなどの台頭が著しくなった。
出川とナイナイ・岡村隆史の“迷シーン”といえば、「人間性クイズ」だ。この名物企画は唯一、クイズと無関係。芸人同士による、ドッキリ企画だ。旅館の密室のなかで、騙される芸人は、ただ1人。だが、騙す芸人は室内のもう1人と、別室でモニタリングをしている番組関係者全員だ。この男2人の空間で、出川は“ゲイでSM好きの先輩”に扮して、岡村を騙した。つもりだったが、じつは逆ドッキリを仕掛けられており、いつしかムチでしばかれることに…。その見事なまでのやられっぷりで出川は、芸人としての株を上げた。
新スター誕生とともに、毎回大きな期待を寄せられていたのは、罰ゲームの規模。第5回大会ではじまった「○×クイズ」からは、爆破がマストアイテムとなった。不正解ゾーンを選んだ芸人のエリアが、すさまじい爆音とともに爆発・炎上。その威力は回を重ねるごとに増していき、バズーカー、ミサイル、逃亡を図るターゲットを確実に撃つロケットランチャー、命中率100%のスカッドミサイル。ついには、本物の戦車まで出動した。乗用車や大型バスの爆破は、もはや日常的。そのデカさは、『西部警察』(テレビ朝日系)と肩を並べるほどだった。
もうひとつの代表アイテムは、粘着系。初期は、透明のガラスボックスに芸人が入り、対戦芸人の暴露をしていくゲームで、暴露量が少ないと、どんどんラブラバーが投入されるものだった。ラブラバーとは、歯医者で歯形を取る際に使う、液状の特殊ゴム。頭から液状まみれになる芸人の姿は、グロテスクだったが、予想以上に固まる時間が早かったため、却下された。
第4回大会からは、「粘着クイズ」となって進化した。クイズに不正解すると、すべり台の傾斜が激しくなって、芸人が落下。そこには、ハエ取り紙に使われる超強力な粘着液が敷き詰められており、パンツ一丁の芸人は、全身から糸を引きまくった。やがて、ゲームは難易度と痛みを増していき、その上に丸太の棒を配置し、棒で殴りあうゲーム、クレーンで吊るされアップダウンされるゲーム、粘着で覆われた真ん中で相撲を取るゲームなどに変化。最終的には、プロレスのリングを粘着で囲み、落下した芸人が動きを止められた間に、対面する粘着床が動き、芸人をはさむという、危険極まりない域にたどり着いた。この「粘着ばさみ」をもってシリーズは完結したが、粘着が体に付着すると2時間は取れなかったという。
BPO(放送倫理・番組向上機構)とテレビ制作側のバランスが崩れた今、“ウルトラクイズ”は再現できない。それを見越して、たけしが100を超えるゲームを生んでいたとしたら、その発想自体が伝説…なのかもしれない。
(伊藤雅奈子=毎週木曜日に掲載)