判決によれば中被告は、2014年11月5日の早朝、Aさんが経営する大阪市北区のホテルに侵入。持参したナイフでAさんを脅し胸を揉んだうえ、首や胸などを数回刺して重傷を負わせたという。
中被告といえば'08年、京都府舞鶴市で起きた女子高生殺害事件で起訴されていたが、'14年7月に最高裁で無罪が確定しており、それから4カ月での凶行であった。
「今回の初公判で中被告は、殺意がなかったことや正当防衛などを主張していましたが、とにかく声が小さい。傍聴席最前列に座っていた記者たちも身を乗り出して耳を傾けていました」
こう語るのは、傍聴記者の高橋ユキ氏。
無罪が確定した男による殺人未遂罪にも驚かされたが、意外なのは中被告とAさんの出会いに関してだ。第2回公判に証人出廷したAさんや判決によると、JR堺市駅でAさんが中被告に声を掛けたことが始まりだったというのだ。
中被告は舞鶴事件での無罪が確定する1年前、コンビニでアダルト雑誌を万引きした窃盗罪で有罪判決を受け服役。'14年9月に大阪刑務所を出所。2人が出会ったのはその直後だった。
「その日、Aさんは経営するホテルの従業員として中被告をスカウトしたんです。これはAさんの知人のアドバイスによるもので、出所者であれば仕事を探している人も多く、掃除の仕事でも続けてくれるのでは、という淡い期待からだったといいます」(同)
その交渉で給与月6万円、ホテルの一室を部屋として与えられ食事も支給されることが決まったという。しかし中被告は、客の案内もままならずケンカまでする始末。そのため強制的に休みを取らされるが、それからも「洗濯機を使わせてくれ、お金をくれと言ってきたりした」(Aさん)ため“出禁”となり、犯行はその後に行われたのだ。
中被告は法廷での発言と調書の内容が食い違うことを何度も問いただされ「覚えていない」「分かりません」を連発。法廷は混乱状態に。一方、Aさんが受けた傷は多数で、医師曰く「搬送があと10分遅れていたら間に合わなかった」というほどの重症だった。
拾う神まで傷つける犯罪癖は直りそうもない。