A:40歳を過ぎると1年に1%ずつ筋肉が減るといわれます。標準的な男性の場合、10年で5キロの筋肉が減少します。これを、サルコペニア(加齢性筋萎縮症。筋肉減少症)と言います。
つまり、加齢によって筋肉の量が減ったり、筋肉が質的に弱る現象を指します。持久力をつかさどる遅筋に比べ、敏捷性をつかさどる速筋のほうが減少しやすいことがわかっています。
●筋肉は加齢に伴い減る
一部の人に現れる症状ではなく、多かれ少なかれ、加齢によって誰にも起こる現象です。だからといって放っておいてよいかというと、よくありません。
なぜなら、筋肉がやせ細るということは、脂肪が増えるということだからです。筋肉は糖を燃焼させてエネルギーを作りますが、筋肉が減るとエネルギーの生産が減るので、やせにくいし太りやすくなります。血糖値も高くなりがちです。
また、筋力の低下は運動器の働きを悪くするために、活動にさまざまな障害が出てきます。つまり、サルコペニアが進むと、最終的には寝たきりになってしまうわけです。
ご質問の方の場合、今はまだそのようなことを心配する年齢ではありませんが、今後は筋肉は鍛えないと加速度的に衰えてきます。ですから、今のうちに運動を習慣づけるようにしたいものです。
●ニートで筋力を強化
筋肉をつけるには、ニートで十分です。ニートとは、日常生活で立ったり座ったり、歩いたりして消費されるエネルギーのこと。つまり、あえて運動するといった身体活動以外の日常生活での活動量のことを言います。
このニートを増やすだけで、肥満の防止や筋肉の強化に効果があることがわかっています。
具体的には、たとえば、電車では座らない、エスカレーター、エレベーターは使わないなど自分で決めて、実行するとよいでしょう。また、手軽な方法として、アンクルウエイトを両足につけて通勤するというのも良い方法で、脚の筋力が強化されます。
歩くことは健康寿命を延ばすことにつながります。少しの速歩が、下半身の鍛錬や健康寿命の延長に役立ちます。そのことを意識し、日々の中で工夫して少しでも多く歩きましょう。
今井一彰氏(みらいクリニック院長)
山口大学医学部卒業。東洋医学などさまざまな医療を駆使し、薬を使わずに体を治していくという独自の観点に立って治療を行う。日本初の靴下外来も設置。