「藤村はスピードプレーヤーとして期待され、獲得した選手です(08年高校D1位)。昨季もファームで17盗塁しており、首脳陣にすれば、二塁のレギュラーとなりつつある現在の活躍は『当然』と捉えているかもしれません。藤村が活躍すれば、巨人は自分たちの育成システムが正しかったとも解釈するでしょう」(プロ野球解説者)
藤村には『新人王』の可能性も出てきた。同一球団からの4年連続選出となれば、史上初。当然、首脳陣もバックアップは惜しまないだろう。また、鈴木は09年オフ、出場機会を求め、FA移籍も検討していた。権利行使はしなかったが、33歳にして掴んだ初好機とも言える。
「05年、27試合にしか出ていないのに11盗塁しています。仮定の計算に過ぎませんが、このペースで1年間フル出場したら、60盗塁に到達する可能性もあったわけです」(同)
しかし、巨人が勝つときは本塁打量産の“空中戦のイメージ”も強い。藤村、鈴木のような『走れる選手』を生かしきれないのは、チーム編成、戦略にも問題があるのではないだろうか。こんな指摘も聞かれた。
「今のセ・リーグには強肩捕手が見当たりません。城島(故障)の故障欠場は長引きそうですし、盗塁王を狙う選手に追い風が吹いているのも事実です」(在阪球団スコアラー)
リーグトップの藤村の盗塁数は「19」(8月30日時点)。93年、「24」で緒方耕一(巨人)、石井琢朗(横浜/当時)が同タイトルを分け合ったのが、史上ワーストの数値。このまま行けば、93年に近いものになりそうだが、ここまで、藤村が盗塁を試みて失敗したのは「4」。鈴木は「3」。8割強の成功率を誇っている。それはそれで評価に値すべきである。盗塁王争いの常連だった赤星憲広氏が引退して、2季目。ファンはセ・リーグのスピードプレーヤーに飢えている。巨人首脳陣が藤村の一軍定着で安堵しているとしたら、「リードオフマンに育て上げるまでが育成だ」ということを認識してもらいたい。(スポーツライター・飯山満)