たけしは、自身が大会最高顧問を務めた『THE MANZAI 2011』に、キャリア20年超えの博多華丸・大吉が挑戦したとき、敗れはしたものの、「華丸・大吉がおもしろい!」と大絶賛。以降2人は、後輩の大会であることを理由にエントリーを避けていたが、たけしから「なんで出場しないの? 出るだろ」と発破をかけられて、14年に再挑戦。すると、見事に優勝を勝ち取った。
松本は、かねてから福岡が大好き。2人がかりで完ぺきな接待を繰り返し、おもしろ芸人も多数紹介した。その結果、15年にパンクブーブー・黒瀬純と松本がノープランで福岡をドライブ旅する特番『福岡人志、松本×黒瀬 アドリブドライブ』(FBS)が実現した。中居は、大親友の松本が大吉に絶大なる信頼を置いているとあって、共演の際に心を許せる間柄になった。
そもそも華丸・大吉は、吉本興業(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)が九州地方に初めて設立した福岡事務所の第1期生。同期のナイナイが大阪でアイドル人気を博したころ、福岡でレギュラー番組を増やしていった。独身で同じ年齢のナイナイ・岡村隆史には、結婚を視野に入れた女性を紹介している。
真面目で、クリーンで、アラフィフならではの落ちつきがある2人だが、「地元の社長との癒着がすごい」ウラの顔があることを堂々と自慢。「太いパイプ」と「ズブズブの関係」にあるため、九州のコネクションは潤沢だ。
華丸は13年、辛子明太子を日本で初めて製造・販売した福岡の「ふくや」の創業者・川原俊夫さんの半生を描いたドラマ『めんたいぴりり』で初主演。『第30回 ATP賞』と『第51回 ギャラクシー賞』の奨励賞を受賞して、舞台化までされている。多忙になっても漫才をする原点は見失わず、先の『M-1グランプリ 2017』で大吉が2年連続の審査員に選出されたのは、確実な裏付けからだ。
大吉のルーツは、哀しい幼少期にある。実の父親は定職に就かず、わずかな有り金も競艇に突っ込んだ。家計は常に火の車。おいしいものを食べた記憶が、ほとんどない。かぼちゃといもが苦手になったのは、貧乏時代が起因している。高校生のころは、この2つがルーティン。高2のとき、泣きながら初めて、「お母さん、戦争はもう終わったとばい。いつまでうちだけ戦時中なん?」と叫んだという。
奇遇か、たけしも松本も中居もみんな、幼いころは赤貧だった。親に気づかい、空腹に耐え、新品のおもちゃと無縁だった。文字どおりハングリーだった時間の長さは、タレントになったあとの肥やしになった。
大吉の成功は、博打の繰り返しであるタレントの人生そのものなのだ。