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夜を棄てたキャバ嬢たちVol.8〜忍び寄る送迎ドライバーの魔の手〜

 夜の蝶を狙う狼はなにも客の中だけにいるわけではない。男が身近にいる空間ならばその危険性は常に付きまとう。

 佳苗(仮名・25歳)は仕事を終えた深夜、いつものように店側が用意した送迎ドライバーを利用していた。送迎ドライバーとは終電時間で自宅に帰れないキャストを送る役割を持つ。現在はサラリーマンの副業バイトとしても人気があるそうだ。時給は1500円ほどでガソリン代は自腹、車内で嘔吐されることも日常茶飯事で送迎中に起こった事故やトラブル等は基本的にお店はノータッチ。数少ない良い事といえばバックミラー越しにパンチラが目撃できるチャンスがあるぐらいだという。そんな一見割に合わないと思われる仕事をする人間の中に、よからぬ考えを抱く者がいたとしたら…。

 送迎ドライバーに送ってもらった夜の事を佳苗はこのように振り返る。
 「その日もクタクタになって車に乗り込んだところ、運転手が“佳苗ちゃんて甘いもの好きだったよね?”ってコンビニで買ってきたようなショートケーキを用意してくれていたんです」

 佳苗は甘いものが好きという気持ちよりも疲労困憊の自分を気遣ってくれる運転手の行動をうれしく思い、発進した車の後部座席に座りながらケーキを口にした。すると車の振動に揺られながら次第に瞼が重くなっていく。数十分後、自宅へ着く前に佳苗は意識を失ってしまったという。

 目を覚ますとすでに陽は登っており、4時間ほどが経過していた。
 「運転手からは“よっぽど疲れていたんだね。軽く起こしても目覚めなかったから僕も車の中で少し眠ってしまったよ”と言われました。その時は頭がボーッとして何も疑わなかったのですが自宅に帰ってからよく考えてみるとおかしい事に気付いたんです。私は普段どんなに泥酔していても帰りの車内で寝てしまうなんて事はなかったし、渡されたケーキだって予めケースから出され、フィルムも剥がされている状態、すでにスプーンまで刺さっていたのも怪しい。それと当初は気のせいかとも思ったのですが服の乱れも若干あった。絶対、ケーキに睡眠薬を入れられて、イタズラされたんだと思います。そう考えるととても怖くなりました」

 これは彼女のただの勘違いだろうか。食べさせられたケーキに予め用意しておいた粉末状の睡眠薬を混ぜられていた可能性も十分考えられる。昏睡した女性の肉体を弄ぶ計画的な犯行だったとしたら…。確かな証拠はなかったのものの、それ以来、送迎ドライバーに対し不信感を憶えた佳苗は次のシフトにも出勤することなく退店を決意した。

 「やはり怖い思いをしたのでもう夜の仕事に戻る気はありません。今は明るい時間にアパレルの仕事をしています」

 過去にも送迎者のドライバーが女性を粘着テープで縛った後、現金を奪うというような恐ろしい事件も実際に起きている。キャバクラで働く女性は出勤時間を終えたとしても、家に到着するまでは決して気を抜いてはならない。

(文・佐々木英造)

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