ゲームキャラの女装をした豊島区に住む専門学校生(20)は「きょうはそこらじゅう歩き回って疲れた。ホコ天は撮影場所であり休憩場所でもあったんです。カメ子は少ないし、レイヤーはいったいどこに行けばいいのか」と憤った。
千葉在住の男性パフォーマー(23)は「早くホコ天を再開してほしい。ホコ天を中止することが事件の解決策とは思えない」などと延々と不満をぶちまけた。横から仲間の男性が「ヲタ芸を踊る場所を返せ!」と叫んだ。
1973年に始まった歩行者天国の一時中止が決まってから初の日曜日。事件現場となったアキバのメーンストリートである中央通りには十数メートル間隔で警察官が立ち、周辺一帯を頻繁にパトロールした。平日にはゲリラ的に即席撮影会やライブなどのパフォーマンスが行われるJR秋葉原駅前でも早朝から警察官が目を光らせた。
たまる場所のなくなったアキバで、歩き疲れたカメ子やレイヤーはメイド喫茶やゲームセンターなどに逃げ込むしかなかったという。「歩きっぱなしじゃ体力が続かないですよ」と弱音を吐く男性もいた。
一方、街頭でビラを配るメイドさんは「事件の影響でお客さんが減るかと思っていたら、むしろ多かったですね」と話す。全体的には人通りが少ないと感じる商店主が多い中、複数のメイド系店舗に確認したところ、日曜日の客入りとしはまずまずで初めて来る客が目立ったという。
通常の日曜日であれば、歩行者天国にはきわどい衣装の女性レイヤーやB級アイドルがあふれる。あっという間にカメ子の輪ができる。ひたすらシャッターを切るカメ子軍団には、地面すれすれからスカートの中を狙うローアングラーも少なくない。4月に大股開きの過激パンチラパフォーマンスで逮捕された沢本あすか容疑者(30)まではいかなくとも、撮られる女性側にもある程度許容するムードがあった。撮影の合間に女の子とお話もできた。
しかし、事件からまだ1週間とあってそうした被写体女性はほとんど見あたらず、ホコ天という都合のいい“集合場所”もなくなった。そもそもメイド系産業は多様化しており、有料でメイドさんの撮影会を実施するところもあれば、店外デートをして思う存分話すこともできる。当面はお金を払って撮ったり話をすることになり、メイド業が活性化しそうだ。
警視庁捜査本部は捜査態勢を増強したほか、被害者を救護した70人以上を聴取し付近の聞き込みを続けている。目撃情報などから襲撃状況の再現を急ぎ、派遣社員加藤智大容疑者(25)を7人の殺人容疑で再逮捕する方針だ。
秋葉原の歩行者天国中止は8日の17人殺傷事件を受け、13日に当面の中止が決まったもの。千代田区が地元商店街や町会と話し合い、警視庁万世橋署を通じて東京都公安委員会に要請した。事件前から常識を逸脱した行為が問題視されていたため、本来のホコ天のあり方を含め再開するか否かを検討していく。少なくとも事件で亡くなった7人の四十九日法要が営まれる7月末までは再開されない見通し。対象区域は駅前中央通りの約800メートル。