地上絵ができた理由に関しては現在でも諸説ある。巡礼や雨乞いなどの儀式に用いられた路であったという説や、気球で死者を送るために空からでないと見えない規模にしたという説など、いまだにはっきりした理由は出てきていない。
また、地上に浅い轍(てつ)や溝で描き、構成されているという点から、経年劣化や自動車などの乗り入れで破壊され、消滅の危機にある遺跡でもある。そのため、地上絵のあるエリアでは保護のために許可なしで立ち入ることを禁じ、近付く際にも専用の靴を履くことが義務付けられている。
そんなナスカの地上絵だが、近年はドローンやAI技術の発展により、これまで知られていなかった図像が発見されて注目を集めている。
中でも、日本の山形大学は2012年に現地にナスカ研究所を開所し成果を出している。2011年1月、山形大人文学部の坂井正人教授を中心とする研究グループがナスカ台地南部で、上空を飛行中に未発見の地上絵2つを発見している。新発見の地上絵は人間の顔、獣と推測されているもので、大きさは数メートルだという。
また近年でも貴重な発見は続いており、2015年7月には、家畜リャマなどの動物をかたどった地上絵24点を発見したと公表。そして11月15日、新たに143点の地上絵を発見したと発表した。こちらは坂井教授らが2018年までの約3年間の調査で、主にナスカ台地の西部で見つけたという。人物や鳥、ネコ科の生物やラクダなどの動物が確認できたそうだ。
今後も技術の発展により、さらに地上絵が見つかっていくのかもしれない。それと同時に、地上絵の保存も大きな課題となっていくとみられている。
(山口敏太郎)
参考記事
ナスカの地上絵143点発見 AIも活用、山形大発表
https://this.kiji.is/568011029622965345