「何で山本さんの名前が出てきたのか?」
実は、報道陣に逆取材をかける現役選手もいるそうだ。
「北京五輪('08年)の野球代表チームで守備・走塁コーチを務めましたが、『ディフェンスに関する指示を出していたのは宮本慎也選手(現ヤクルト)だった』なんて話もあるくらいです。広島で2期10年の監督を務めましたが、どちらかと言えば若手を育てるタイプの指揮官でした」(ベテラン記者)
山本氏の名前が突然出てきたのには、興行的事情もあるらしい。
「原監督を全面的に推せないからでしょう。『1億円の口止め料事件』が大きいですよ。読売グループはWBC・一次予選の代理興行を行うわけですが、巨人OBから代表監督を決めることになれば、それこそ中日がクレームをつけてきた通り“読売の興行”になってしまいます。読売グループ自らが他球団のOBを推すことで、興行としてのWBCを成功させたいのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
この“山本代表監督”について、ナベツネ会長は何の意見も述べていない。
前出のNPB関係者がこう言う。
「前回も原監督に決まったのは、ペナントレースが終わってから。来年3月まで、まだ十分に時間があるわけだし、今年の日本シリーズ後に候補選手が発表できるくらいのスケジュールが組めれば問題はない。代表監督の発表? 報道で名前が出ている人の中から決まるんじゃないですか」
興行の主導権を握りながらも、読売がこの件について慎重なのは、前回、中日からの協力を得られなかった点。中日サイドの言い分は「選手個人の意思で各々が代表を辞退した」という。あくまでも中日サイドの言い分だが、「個人の意思説」は本当だという。
「当時、巨人の要職にいた人が『あること、ないこと』を言い、他球団からも反感を買いました。本当に12球団が協力できる体制を作らないと、第2、第3の中日(非協力チーム)が出かねない」(前出・関係者)
読売グループがナベツネ会長の思惑と違う名前を挙げたのも、そういった事情があったようだ。
「2015年、国際野球連盟(IBAF)がWBCとは違う国際大会(プレミア12=仮称)を主催します。『WBCはメジャー機構の大会、真の国際大会はプレミア12』という考えが、世界の常識になりつつある」(IBAF関係者)
すでにNPB、巨人以外の各球団幹部の関心は『プレミア12』に移りつつある。WBCの問題でモタモタしているのは、読売グループだけかもしれない。