その人物は性別、勤務先などすべての情報を出さない条件でわれわれのインタビューに答えてくれた。
「銀座、赤坂の高級クラブなどで働いていたホステスが実はスパイだったという話はよく聞きました。しかし、最近、メイドブームに目をつけた私たちのよく知る国がメイドカフェなどにスパイを送りこみ始めたのです」
われわれも最初にその情報を耳にしたときは耳を疑った。いくら情報を集めるのが仕事とはいえスパイがメイドの格好などするだろうか?さらにメイドにペラペラと話をしてしまう人間が重要機密を扱うはずがない。しかし、その人物の話を聞くにつれ、それはわれわれの軽率な思い込みだったということに気付かされる。
「もともと、自衛隊の若手隊員が意外に多く秋葉原に出入りしていることからメイドスパイ作戦は始まりました。最初はそれほど効果を期待していなかったと思います。ところが、メイドカフェには自衛隊の他に多くの公務員、システム、プログラミング関連企業の人間が出入りしている上、皆、知識レベルが比較的高いことがわかりました。さらに、メイドカフェを好んで利用する客は、生活範囲が狭く、女性の扱いも決してうまいとはいえない。スパイ側にとって非常にコントロールしやすいタイプの人間が多い。情報を集めるのに格好の場所だということが判明したのです」
確かに、言われてみればメイドカフェに集まる人間をターゲットにするのは、的外れではないかもしれない。では、一体メイドスパイはどのようにターゲットに近づき情報収集を行い、どのような効果を上げているのだろうか?
「お店で名刺を配り、メイドが開設しているブログにアクセスしてきた人間と店の外で会うという、普通にメイドとお近づきになるプロセスと一緒です。客はゲーム、アニメ好きが多いので話も合わせやすい。当初の予想をはるかに超え絶大な効果があるそうです。ただ問題は、日本語が流暢でヲタク文化に精通しスパイとしての教育をされた若い女性を確保することはほとんど不可能。主に、男を使ってメイドをコントロールしているのが現状です」
仲のいいメイドに本当のご主人様が存在し、その男の命令でスパイ活動をしていたら…まったく秋葉原は恐ろしい街といわざるを得ない。しかし、秋葉原でスパイ活動をして重要な情報など集まるのだろうか?
「情報とは、必要とされる場所で光を放ちます。貴重な情報かどうかはそれを知っている人間ですら判らないのが普通。おそらく、メイド自身、スパイ活動に深く関わっているという認識はないでしょう?」
確かにメイドカフェは普通の飲食店などに比べ非常に密な関係を作りやすい。普通に話している会話の一つ一つが情報ならば防御策などないのに等しい。あえて、二股、三股をかけているメイドには近づかないという以外に防御策はなさそうだ。
それにしても許せないのは、男心をもてあそび活動するメイドスパイ。是非、秋葉原のメイドは一人のご主人さまに使えるというメイドの原点に戻って欲しい。