真剣な顔でそんなことを言ってきた橋本さんは、30代半ばにして、いくつもの飲食店を経営している。ちょっと前まで、バリバリの営業マンだっただけあって、会話が途切れるなんてことは、まず、ありえない。それどころか、いつも自分から話を振ってくれるから、店の女の子みんなから慕われてた。
こうやって何度も店に来てくれて、アフターに行く機会も多かったけど、まったく欠点が見つからない。完璧な人だと思った。きっと、橋本さんみたいな人をゲットできたら幸せなんだろうな。普通は。
でも、まったく乗り気になれない私は、丁重にお断りをした。
「私ね、オジ専なんです」
橋本さんはキョトンとして私をジッと見ていた。そして、何か口にしようとしていたけれど、それを遮るように私は話し続けた。
「母子家庭で育ったから、お父さんって存在を知らないんです。それが関係してるかはわからないんですけど、恋愛相手にも、お父さん世代だろうなっていう、う〜んと年上の男の人を求めちゃうんです」
別に、お客さんを傷つけないために嘘をついてるわけじゃないんです。正真正銘、本当にオジ専なんです、私。
年齢は、最低でも、自分よりふた回りは離れていないとダメ。隣に座ったときや、同じベッドで眠るときに匂う、オジサマ独特の匂い(※加齢臭)フェチ。ついでに付け加えると、オジ専であり、デブ専でもあるんです(笑)。
この仕事についたのも、大好きなオジサマたちとずっと話していられる。なんて、軽く考えて入っちゃっただけなの。(もちろん、今はちゃんとこの仕事に誇りとやりがいを持っているけどね)
そんな私が今付き合っている彼の年齢は58歳。私とは35歳差。もちろん、惚れ込んだのも、猛アタックしたのも、私から。最初は、どうせ色恋だろとか、お金目当てかよとか、かなり疑われたけどね。今は、ちゃんと信頼し合っています。
でも、私だけが特別というわけでもなく、オジ専とかデブ専の女の子って、意外に多いんですよ?
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。その後、これまでの経験を活かすため、フリーランスへ転身。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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