最近までこの第三次ブームを引っ張ってきたのは、第一次ブームを経験した「ダッシュ! 四駆郎世代」とその子供達であった。ゲームやカードバトルなど子供の遊びがデジタル化し閉鎖的になるなか、パーツチューンなどで技術と経験を必要とするミニ四駆は親父の威厳を発揮する数少ない場となっていたようだ。
ただ、最近その風景に少しづつ変化が起きている。模型店や大型電気量販店で仕事帰りにパーツを購入し休日に走らせる20代前半の男性が急増している。彼らは、その昔、通称「レッツ&ゴー世代」と呼ばれていた第二次ブーム世代の人間である。この第二次ブーム世代の急速な出戻り現象は、彼らが当時置かれてた状況が影響しているのではないかと思われる。
この世代は、未改造のミニ四駆を親のゴルフアイアン片手に道端や公園で走らせて満足できた第一次世代と違い、ライトユーザーであっても“小遣いという名の資金力”の差が如実に現れた。この時代の主力であったフルカウルミニ四駆のシャーシであるスーパ1シャーシは、チューンを前提に作られており、モーターは付属されていない。走らせるには安いものでも300円前後の別売りのモーターを買うのが必須であった。
これだけでも子供にとっては大きな出費なのに、それに加え毎回の電池代、そして専用工具やチューンパーツも多様化しており、改造には莫大な費用が要求された。近所の模型店でヒーローになる者には必ず潤沢な小遣いが必要であった。まるで、F1グランプリのごとく資金力がなければ勝てなかったのだ。この時に“資金力不足”で苦い経験を味わった者たちが、社会人となり金銭的な余裕ができたことで、過去の鬱屈を晴らす為に再びミニ四駆の世界に舞い戻っているのだ。
第三次ブームはアニメや漫画のタイアップに頼らないのが特徴だ。そしてこのブームは以前の二回のブームほど大きなうねりではないが、これからの続々と社会人になる第二ブーム世代の出戻り需要次第では、最長のブーム期間になる可能性をもっている。20代前半で、過去に「金持ちの同級生のマシンがセルフマグナムトルネードして壊れてしまえ」と密かに望んだ苦い記憶を持っていた方は、払拭するためにも、第三次ミニ四駆ブームにのってみてはいかがだろうか。(斎藤雅道)